③ ジョブ型(職務主義)の導入=役割で給与が決まる

コロナ禍以降、成果主義とともに脚光を浴びているのが「ジョブ型」と呼ばれる、主に外資系で浸透している雇用制度です。これは「職務主義」とも呼ばれています。

ジョブ型とは「人」ではなく「仕事」に値段をつける制度です。日本では「会社に何年勤めている○○さん」「○○ができる○○さん」と勤続年数や能力などによって給与が決まるのが一般的です。要は「人」に値段をつけているわけです。

一方、ジョブ型では「営業部長」「経理部長」といった役職や役割に値段がつきます。

ジョブ型は、富士通や日立製作所、KDDI、資生堂など、大手企業がすでに導入を開始しており、新たな雇用形態として注目を集めています。

この働き方で必要となるのが、「ジョブディスクリプション(job description)=職務記述書」と呼ばれるワークシートです。

これは、業務内容、重要度、目標、責任範囲、必要なスキルなど、自身の職務内容=ジョブについて詳しく定義し記述するものです。欧米ではこの書類によって選考や採用が行われています。

ジョブ型の導入にかかわらず、自身の「仕事」について詳しく定義することは、今後の社会において非常に重要になってきます。

リモートワークでは、上司によるマネジメントが徹底できません。そのため、今後、多くの企業で求められるのは、セルフマネジメントができる人材です。

「私はこんな仕事をして、このような成果を出します」と、自分自身で仕事を定義し、成果を出せる人ほど、高い評価・高い年収を得るようになっていきます。

④ 給与ダウンが当たり前に

これまでの日本では、「給料は下げない」という考え方が一般的でした。成果によってボーナスに差があったり、昇給はしなくても、基本給は維持されていました。

だから給料を下げない代わりに、早期・希望退職者を募って中高年をリストラしていたのですが、それだけでは企業が持たない時期が来てしまっています。

なぜなら中高年にしてみれば、早期退職しても再就職できる保証はありません。給与が多少下がっても会社にしがみつきたい思いがあります。そのため早期・希望退職者を募っても応募する人が少なく、困っている企業がたくさんあります。

でも成果主義やジョブ型を導入すれば、給与が下がる人は確実に増えます。言い方は悪いですが、実際には社員の給与を下げるための方便という側面があるのです。

2020年4月1日からは、「同一労働同一賃金」が全国の大企業でスタートしました。中小企業に対しても、2021年4月から適用されます。

同一労働同一賃金の目的は「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消すること」といわれています。

この触れ込みのとおり、非正規雇用の人たちの待遇が改善されればよいのですが、私はそうはならない可能性が高いと考えています。

非正規雇用の人たちの給与を上げるのでなく、年収に見合った仕事をしない正社員の給与を下げることで待遇差を改善することになるのではないでしょうか。

上げるべき人の給与を上げ、下げるべき人の給与を下げたい。これが企業の本音です。コロナ禍を機に、その本音が顕在化してきたのです。

給与ダウンは当たり前。そんな時代がすぐそこまで来ています。

⑤ 能力主義はなくなる(発揮されない能力に価値はない)

近年のもうひとつの大きな変化は、企業が「何」を大事にして人を評価するのか、給与を払うのか、という根本的な考え方です。

これまでの日本では「能力」に対して給与が支払われていました。

これは能力主義と呼ばれ、戦後日本の給与制度の根幹となってきましたが、これこそが現在の黒字リストラやサラリーマンの減収の根本原因となっています。

能力で人を評価し、給与を払う。一見すると理にかなった制度のように思えますが、たとえ能力を持っていても、実際に使わなければ意味がありません。

たとえば、電車に乗る「能力」を持っていても、実際に電車に乗る「行動」を起こさなければ、目的地に着くという「成果」を果たすことはできませんよね。

ところが、多くの企業では「能力」だけにフォーカスして、「年齢や勤続年数が上がれば能力も高まる」という考え方に基づいて、年を取れば取るほど給与が高くなる「年功序列」と、ほぼイコールの給与制度になっていました。

その反動からバブル崩壊後に成果主義が大ブームになりましたが、今度は「成果」だけをクローズアップしたため、「結果さえ出せば、お客さんを騙して売ってもいいじゃないか」といった短絡的な考えが横行し、焼き畑農業みたいな営業が増えました。

また、個人の数字を重視しすぎたため「チームで頑張ろう」ではなく「手柄は俺のもの」といった個人主義に陥り、スキルや経験が継承されない問題も起こりました。

成果と行動に対して給与を支払う

こうした反省を踏まえ、現在は多くの企業で「成果」と「行動」に対して給与を支払う考え方が中心になっています。

「能力」は目に見えませんが、「行動」は実際に目にすることができます。「成果」は運や環境によって左右されますが、「行動」は再現性が予見できます。

発揮されない能力に価値はありません。今でも「能力」に対して給与を支払っている会社はありますが、次第になくなっていくでしょう。

自身の能力を生かし、どんな行動を起こし、どんな成果を出すのか。今後は、これまで以上にアウトプットが重視される時代になっていきます。