フィギュアスケートは、スポーツであり、アートである

撮影=原貴彦
フィギュアスケート選手の宮原知子氏

【三宅】フィギュアスケートはもちろんスポーツではあるのですが、限りなく芸術性の高いスポーツだと感じています。

【宮原】たしかにスポーツとしての側面と芸術的な側面の両方を高い次元で求められるスポーツは少ないかもしれません。あとは新体操とか、シンクロナイズドスイミングくらいですかね。

【三宅】だからこそ観ている人に感動を与えると思うんですが、当然、ご本人としては相当体力的にきついわけで、演技中は苦しさを表に出さないように表情をつくられているわけですか?

【宮原】実はそうでもないんです(笑)。もちろん体の動きが音楽と一体化していないといい演技はできないので、そこは体に染みつくくらい練習を重ねます。ただ、基本的に演技中はジャンプのことで頭がいっぱいなので、どうしても集中した顔つきになりがちです。本当は表情の演技も必要なのでしょうが、なかなかそこまでの余裕がありません。

【三宅】そういうものなんですね。

【宮原】その意味では、激しい曲だと体力的なきつさから自然と表情が険しくなるので、あまり表情のことを意識する必要がないので、少し気が楽です。

最後は「自分を貫ける選手」が強い

【三宅】フィギュアスケートでは「こういうタイプの人が活躍しやすい」といった傾向はあるのでしょうか?

【宮原】自分を貫ける人が強いと思います。性格に関しては、気が強い選手がいたり、優しい選手がいたり、楽観主義の人がいたりと、いろいろですけれど、やはり周りに左右されないというか、自分がやるべきことに100%集中できる人ほど、成果を残す気がします。結局、スケートという競技は、サッカーやテニスのように対戦相手がいて、その場に応じて作戦を変更したりするものではなく、自分でプログラムを決めて、それをひたすら練習して、練習の成果を本番で出し切るスポーツなので、最後は自分を貫ける選手が強いと思います。

【三宅】なるほど。ちなみにさきほど「本番中はジャンプに集中している」とおっしゃいましたが、滑っているとき、観客の反応はわかるものですか?

【宮原】踊りの部分で手拍子をいただくと、気持ちも乗ってきます。

【三宅】手拍子で逆にリズムが崩れるということはないのですか? 会場の音響のせいもあるのでしょうが、テレビ中継を観ていて、手拍子がズレているなと感じることがありまして。

【宮原】実際、ズレていると思うときが、なくはないです(笑)。