「異常な行動」だけでウケようとする人の末路

ここでカンのいい読者は気づいたと思います。ウケるタレントもそうでないタレントも、話しているのは、「1日5時間も半身浴をしています」ということであり、まったく同じ内容なわけです。要は、おもしろいかどうかの違いを生んでいるのは、そこに感情が乗っているかどうかだけなのです。

渡辺龍太『おもしろい話「すぐできる」コツ』(PHP)

それにもかかわらず、もしタレントが、「なるほど。1日5時間も半身浴をした、みたいな異常な行動を話していればウケるんだ!」と勘違いしてしまったらどうでしょうか。おそらく、よりウケようとすればするほど、もっと珍しい、他人の気を引く行動を起こさなくては、という強迫観念にかられて、こんな風にエスカレートしていくでしょう。

・レベル1:毎日5時間は半身浴をしています
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・レベル2:毎日8時間は半身浴をしています
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・レベル3:出かける時以外は半身浴をしています
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・レベル4:起きている時は基本、半身浴。ほとんど湯船で生活しています

ぶっとんだ話には高度な話術が必要

ここまでエスカレートしてくると、「感情の高まり」で話をカバーすることが不可能になってきます。相当ぶっとんだ話ですから、「おもしろい話」として披露させるためには、それこそ、フリ・ボケ・ツッコミ的な技術が必要になります。

なぜなら、もはや事実ではないことを、実際にあったことのように聞かせる技術が必要になるからです。そういった技術がない状態でこんな話をしようものなら、まわりの人はウケるどころか、ウソにしか見えない特殊な行動についての、おもしろくない話を聞かされたと感じ、ただ渋い顔をするだけです。