なぜうますぎる儲け口に気軽に乗ってしまうのか

けれどこうした話を自分が受けたり、仲間のオペレーターから聞いたりするたび、私は気の毒だと感じるより先にまず疑問を覚えてしまうのです。なぜあまりに安易に自分の個人情報を他人に教え、うますぎる儲け口に気軽に乗ってしまうのでしょう? そこがどうにも理解できないのです……。

ある時は、フィリピン人のホステスさんからこんな申請取り下げの電話が入りました。

「20代半ばぐらいの日本人男性をフィリピン人の仲間に紹介され、『簡単に大金が手に入るから手伝ってあげる』と言われたので、給付金の申請をしてもらった。だけどいつまでたっても入金がないので、やっぱりやめたい」

写真=iStock.com/Zhang Rong
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他のホステス分も含め、その日本人男性から伝えられた共通のメールアドレスを使って申請しているというのでセンターの管理者がデータベースに当たってみると、出るわ出るわ……。東京在住の当の男性は、フィリピン人女性を中心に日本人も含めて100名以上の申請に関与していて、7月頃までの申請分はすでに給付済み。さらに自分名義でも個人事業主と法人の両方で申請して満額受給しているばかりか、父親に個人事業主と法人で、母親に個人事業主でやはり満額受給させているとのことでした。

制度の意義は、できる限り迅速に支援することだったはず

給付金の不正受給や給付金詐欺が事件として報じられると必ず、審査基準の甘さを糾弾する声が上がります。確かに、明らかに資格のない者からの申請であっても、あまりにもやすやすと受給している例が後を絶たないので、その批判が的を射ている部分はあります。

でも、持続化給付金という制度のそもそもの意義は、コロナ禍に苦しむ事業者を一人でも多く、そしてできる限り迅速に支援することだったはずです。だからこそ証拠書類や給付条件に必要以上の厳しいハードルを設けなかったわけで、そこを悪用する不届き者への給付分をいわば“歩留まり”として目をつぶってでも、事業者救済というプラスの効力を優先させたのではないでしょうか。これは事業者との接点となる場で、彼らの肉声を聞いてきた者としての、率直な意見です。

そしてひと通り給付が落ち着いたところで、当局が本格的な不正の摘発に乗り出したというのが、今に至る流れなのではないでしょうか。

また持続化給付金事務局も、不正受給に対しただ手をこまねいていたわけではありません。