元日のER受診者数は前年より減少している

「感染者増大」という報道ばかり流れているが、2020年年末から今年はじめにかけての湘南鎌倉総合病院ERは、例年よりぐっと「患者数」が少なかった。2020年元日のER受診者数が263人だったのに対し、今年の元日は134人。ほぼ半減していたのだ。八戸市立市民病院院長の今明秀医師も、「2020年12月は通常の外来、救急外来ともに10%減少し、静かな年末年始だった」と話す。

八戸市立市民病院院長の今明秀医師

「年末年始にこんなにすいているのは、前代未聞の事態ですよ」と、山上医師が言う。

患者殺到に備えて、通常より多めの人数の医師に勤務をお願いしていた。やや手持ちぶたさな新米医師たちに、

「それじゃあ前代未聞の30分休憩をあげよう」と笑いかける。

「しっかり休んできます」

応える医師の表情が少しゆるむ。

ERでは、8~9時間のシフト制勤務だ。同院に限らず、内科や外科などのほかの科では自分の患者の具合が悪くなると帰れないため、36時間勤務などザラにある。だがそれでは集中力がもたないと、同院ERでは三交代制で勤務時間を短くしている。そのかわり勤務中はなかなか休憩がとれない。患者からひとときも目が離せないからだ。「3分間」も現場を離れられないという意味で、「救急医の食事はカップラーメンを選んではいけない」という不文律があるぐらいである。

休んできますと宣言したのに、皆、15分もすると現場に戻ってきた。“休憩”に慣れていないため、落ち着かないようだ。そんな姿を見て山上医師が笑う。和やかな年明けだった。

筆者撮影
例年に比べると湘南鎌倉総合病院ERは和やかな年明けだった。

コロナ診療のために「通常の救急を停止」では本末転倒

2021年1月6日付の読売新聞の朝刊1面には、<救急も停止「現場もたない」>という見出しがおどった。記事には「年末年始も感染者数は減少せず、緊迫した医療現場」とある。さらに通常の救急患者の受け入れを停止したという大学病院の状況も記されていた。

コロナの重症と中等症患者であふれた医療現場は大変な状況だろう。しかし、病院として、通常の救急を停止するという姿勢を、私は非常に疑問に思った。

水道や電気のように、生死に関わる救急医療は“地域のインフラ”だ。

湘南鎌倉総合病院院長の篠崎伸明医師は2020年2月に新型コロナ患者の入院を初めて受け入れた時点で、「コロナを含めたERは最後まで死守する」と宣言したという。

そう宣言すれば、自分たちの病院だけでは診られないほどの患者が殺到する恐れがある。それなら周囲の病院と連携すればいい。あるベテラン救急医はこう指摘した。

「中等症を全科をあげて診療する、または他院へ転院搬送して、より重症を受ける体制をとる。必ずしても大学病院で診療しなくてよい患者を“転院搬送”できないのであれば、そもそもそれを整備してこなかった医師会や自治体にも責任があります。それはまさに平時の救急医療システムの整備そのものの遅れ、そしてそれを問題視してこなかったツケです」