当然といえば当然なのだろうが、アウトドア用品メーカーの商品開発は、一部の専門部署主導で作られるというより、アウトドア愛好家の意見で作られることが多い。モンベルでは、「新商品は、自分たち(従業員)がほしいものに基づいて作るというのが基本的な考えです」と、広報部部長代理の竹山史朗氏は語る。モンベルには現在、約500名の正社員がいるが、その誰もがアウトドアを実践するアウトドア愛好家である。彼ら・彼女らは新商品のもととなるアイデアを思いつくと、どしどし提案し、自分たちが欲しいものを商品化していくのだ。

同社には、「アイデアリクエストシート」というものがあり、自分や家族が発想した新商品のアイデアをいつでもエクセルの定型フォームに記入して提出できるようになっている。その数は、ワンシーズンで約2200件にも上るという。

提出された夥しい数のアイデアは、25人の企画部スタッフが、ひとつずつ検討し、同様のアイデアは集約し、異なったアイデアは一つも消去することなく、会議の俎上に載せていく。会議は、全社的に行い、66人の店長をはじめ、総務部、経理部等の人まで加わってなされる。同社の社員はすべてアウトドア愛好家なので、会議の場では有益な意見交換がなされるという。モンベルでは、このような会議をワンシーズンに3回も行って、新商品を世に送り出しているのである。

モンベルの山スカートのアイデアは前述の通り、シール・エミコ氏の自転車用ウエアから派生的に生まれたものだ。が、詳細な商品提案は社員の行ったものである。標高2000メートル級の山でも、山頂付近では冷えることがある。そんなときに腰回りを温めるために保温性の高い中綿を入れようとか、表面をキルト面とフラット面のリバーシブルにして風合いやカラーのバリエーションを楽しめるようにしようと考えたのは、社内の人たちだった。ちなみにカラフルでオシャレなリバーシブル山スカートを最初に市場化したのは、モンベルである。

渡邊氏によれば最近、20代の女性で山には登らないがウエアだけは持っているという人も増加しているそうだ。それは機能性とファッション性の両面のメリットを有しているからである。山用の商品は、もともと厳しい環境を想定して作られているので、軽量で稼働性、耐久性に富み、蒸れたり、静電気を発生したりしないからだ。それに加え、女性好みのオシャレなスタイリングやカラーリングを実現し、ファッショナブルになってきている。結果、トラベルウエアとして、街着として入手する女性も少なくないというのだ。

もとは登山用のダウンジャケットが一般に普及したように、山スカートも一過性のブームを超え、冬の装いの一つのアイテムとして定着化の道を歩んでいるのかもしれない。

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