現実のビジネス社会でも半沢直樹タイプが本社に復活できる

また、出向は左遷というイメージがあるが、一般的な出向は必ずしもそうではない。

上位の役職で子会社に出向させて経営術を学ばせる人材育成の出向もあれば、新規事業会社の現場で修羅場を経験させて本人の実力を見極める出向もある。特に総合商社の事業会社への出向はその傾向が強い。

日曜劇場『半沢直樹』公式ブック

仮に社内の出世競争に敗れて子会社に出向しても復活のチャンスもある。復活のためには、出向先での仕事の評価が大きく影響するが、情報通信会社の人事部長は2つのタイプに分かれると語る。

「上のポストを狙っていた課長職の社員が子会社に飛ばされると誰しもショックを受ける。ただ、子会社に行ってもそのショックを引きずって腐ってしまう人と、気持ちを切り替えて目の前の仕事にコツコツと取り組む人の2つに分かれる。腐ってしまうと、子会社でも斜に構えたような態度になり、全力で仕事に取り組むことがなくなり、二度と復活することはなく、子会社でもお荷物になっていく。一方、新しい仕事でも前向きに取り組み、しっかりと業績を上げていく人は子会社での信頼が厚くなるだけではなく、本社でも『あいつは子会社に出されても、なかなか打たれ強い』と評価され、本社に戻されることもある」

後者のタイプは出向先でもめげることなく活躍する半沢直樹に似ている。

大事なことは、どんな不遇な環境に追い込まれても、新たに出直す覚悟と努力を絶やさないことだ。組織も人間社会だ。腐ることなく真面目に仕事をしていれば拾う神もいるということだ。

コロナ禍で9月以降、出向・転籍や希望退職募集に踏み切る可能性が

ただし昨今は、コロナ禍の企業業績の悪化によって徐々にリストラ圧力も高まりつつある。大手サービス業の人事部長は「9月の中間決算を見て、出向・転籍や希望退職募集などの人件費削減に踏み切る可能性がある」と言う。出向どころか、クビになってしまうかもしれないのだ。

「減収減益になるのは間違いない。人員調整を行う場合、経営会議で余剰人員数を確定し、人事部として最初に出向・転籍の受け入れ先と人員数を確保する。それでも足りない場合は希望退職募集を行う。今年の秋から対象者の選別を実施し、来年1月には社内向けに発表することになるかもしれない」(人事部長)

ちなみに出向は会社の業務命令であり、逆らえないが、転籍は他社に移籍するために本人の同意を必要とする。