「有名になるためになんでもやる」心理

さて、これまでSNSの三大特徴のうち「生活のスペクタクル化」と「何でも裁きたがる傾向」を見てきたが、あとひとつ、「有名になりたいという欲求」が残っている。確かに、勇気を出して冷たい水に飛びこむという「スペクタクル」にも、「有名になりたいという欲求」は含まれるだろう。そもそも、SNSを始める理由そのものが、「有名になりたいという欲求」であるケースも少なくない。

ジャン=フランソワ・マルミオン編、田中裕子訳『「バカ」の研究』(亜紀書房)

「どうしたら不特定多数のネットユーザーたちから、自分だけが抜きんでることができるだろう?」。これは、有名になりたいすべての者たちが抱えている問題だ。そしてその多くが、人目を引く行為、つまり「スペクタクル」によって現状を打破しようとする。前述したように、チャレンジ動画を撮るために家族を危険にさらす者たちもいる。だがユーチューバーの中には、有名になりたいがためにさらに大きなリスクを負う者たちもいる。あるアメリカ人の若夫婦もそうだった。

「ペドロとわたしは、世界史上もっとも危険な動画をこれから撮るつもりです」。妻はそう宣言すると、胸元に分厚い百科事典を抱えた夫に向けて銃を撃った。百科事典が銃弾を受け止めてくれると思ったのだ。ところがその結果……妻は夫を殺害した罪で六カ月の懲役刑に処された。まさにエベレスト級のバカだ。だが、こうしたバカの山を登る者たちは今後もたくさん現れるだろう。

こうした〈バカの先験的条件〉としてのSNSの三大特徴は、この記事で紹介した以外の多くのケースにも当てはまる。そう考えると、SNSというフィールド内で生まれて形成された「バカ」について、これら3つの特徴は「バカの定義」と言いきることができるだろう。

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