※本稿は、伊藤絵美『カウンセラーはこんなセルフケアをやってきた』(晶文社)の一部を再編集したものです。
エクスポージャー(曝露療法)をいろいろ試した
エクスポージャーとは認知行動療法の主要技法の1つで、日本語訳だと「曝露療法」というおどろおどろしい名前がついています。
「曝露」とは「さらす」という意味です。私たちは普通、不安や恐怖や不快を感じる対象は避けたいですよね。たとえば高所恐怖の人であれば、高いところに行って下を見渡すのは怖いから避けたいと思います。スピーチ恐怖の人であれば、人前でスピーチをするのはとても不安なのでやはり避けたいでしょう。パニック症の人で、電車で発作が起きそうであれば、電車に乗ること自体を避けようとします。
しかしエクスポージャーでは、あえて避けずに、その場に自分を「さらす」のです。
そしてさらすことによって生じる恐怖心や不安感や不快感にも自分をさらし、それらのネガティブな感情をそのまま感じようとします(このへんはマインドフルネスとも重なりますね)。エクスポージャーをしているうちに、あるいはエクスポージャーを繰り返しているうちに、私たちはさらすことに慣れていき、ネガティブな感情に耐えられるようになり、場合によってはネガティブな感情のピークが徐々に弱まっていきます。
そうすると、従来であれば避けていた状況を避ける必要がなくなり、自分にとって必要な行動が取りやすくなっていきます。これがエクスポージャーのメカニズムで、先ほど紹介した高所恐怖などの不安症を抱える人は、エクスポージャーによって大幅に回復することがよくあります。
さて、私や私のオフィスのスタッフたちは認知行動療法のカウンセラーとして、多くのクライアントにエクスポージャーを実践してもらっています。認知行動療法の場合、クライアントに実践してもらう技法は、カウンセラー自身が実践しておく必要があります。
そういうわけで、一時期、私たちは様々なエクスポージャーを集中的に実践しました。それがとても面白かったし役に立ったので、ここで紹介してみたいと思います。