心だけでなく身体の反応を大きく変える
そしてそのとき、「ああ、私はもう2度と、このフジヤマに乗って、キャーキャー興奮することはできないんだ」という自動思考が出てきて、一瞬、寂しく感じたのです。そして改めてエクスポージャーという技法の威力を実感したのでした。エクスポージャーは心だけでなく身体の反応を大きく変えてしまうのです。それを身をもって知った体験でした。
ちなみに私はその後、頸椎を痛め、「ジェットコースター禁止」というドクターストップを食らってしまいました。今後もう一生、絶叫マシーンに乗ることはないと思いますが、それについても残念に思うというよりは、「もう一生分乗ってしまったからいいか」と満足感を抱いています。実に楽しく、充実したエクスポージャー体験でした。
バンジージャンプ
そして、とうとう私たち「曝露部」は、バンジージャンプに手を出しました。まずは、当時、日本で最も高いバンジージャンプがあった群馬県の水上に皆で出かけることにしました。
みなかみの場合、橋から川に向かって約40メートルの高さからダイブします。40メートルとはマンションの12階に相当するそうです。バンジーの場合、インストラクターと一緒に飛ぶスカイダイビングとは違い、また乗れば勝手に機械が動いてくれる絶叫マシーンとも異なり、自分の足で踏み切って飛ばないといけません。不謹慎ないい方かもしれませんが、「リアルな身投げ」なんです。
これは本当に怖いし、勇気と思い切りがいります。パニック症で電車に乗れない人がエクスポージャーをするときは、自らの足で電車に乗るしかありません。それと似ています。エクスポージャーに挑むクライアントさんたちはなんて勇気があるのだろう、とあらためて敬意を感じました。
ともあれ、バンジーのスタッフのカウントダウン(「3、2、1、バンジー!」)の声に乗って、文字通り死ぬ気でダイブしました。恐怖の絶頂からの飛び降りです。ところが飛び降りた直後、落下するほんの短い間に感じたのは、得もいわれぬ解放感でした。「解き放たれるってこんな感じなんだ!」という自動思考が出てきたのを今でも覚えています。これは私にとってものすごく大きな体験でした。
エクスポージャーという意味では、バンジーについても、1回きりではなく、何度も繰り返すところに意味があります。そういうわけで、同じ日に2回目も飛び(2回目は割引になります)、翌年にも、さらにその次の年、さらに3年後4年後にも、皆でみなかみに行き、毎回2回ずつ飛びました。計10回飛んだことになります。