もはや素材にこだわるだけでは選ばれない

モスも今年5月、前述の「モスジャパンプライド」シリーズの一環として、ご飯バーガーの新商品「モスライスバーガー海老天めんたい味」「モスライスバーガーよくばり天めんたい味<海老とかきあげ>」を投入したが、長年このタイプの商品を販売している実績がある分、新規性に欠けた。タイミング的にも、マクドナルドに話題をさらわれてしまった。

画像=モスバーガープレスリリースより
「モスライスバーガー海老天めんたい味」と「モスライスバーガーよくばり天めんたい味<海老とかきあげ>」

現代はおいしい食べ物があふれている。それゆえ、単においしいだけでは選ばれなくなっている。モスの商品は素材にこだわっており、どれもおいしいことは多くの人が認めるところだ。だが、それももはや当たり前になっており、それだけでは消費者の興味をかき立てることができない。今の時代に商品を売るには、以前にも増して話題性が必要なのだ。

品質の追求以上に話題性が重要になっている

ほかの外食チェーンのヒット商品を見てもこのことがよくわかる。例えば、牛丼チェーン「吉野家」が昨年2月に発売した「牛丼」の新サイズ「超特盛」と「小盛」のヒットがそうだ。どちらも初速が良く、超特盛は1カ月で販売数100万食、小盛は同じく60万食を超え、共に想定の2倍を売り上げた。

これは28年ぶりの新サイズというニュース性に加えて、名称に「超」と遊び心のある絶妙な言葉をつけて話題を集めることに成功したから、という理由が大きい。実際、ネット上では「“超”という名前が良い」といった言葉をよく見かけた。これがもし「1年ぶりの新サイズ」で例えは゛「特大盛」といった平凡な言葉だったら、これほど売れなかっただろう。

牛丼チェーン「松屋」が今年1月に全国販売を始めた「シュクメルリ鍋定食」のヒットも同様だ。シュクメルリは鶏肉をガーリッククリームソースで煮込んだ、伝統的なジョージア料理。一部店舗で限定的に販売したところ2万件超の声が寄せられるほど反響があり、売り切れが続出するほど人気が出たのだ。これを受け、全国販売するに至った。あまりの人気に、松屋が公式再現レシピを「クックパッド」に載せたほどだ。

これほどの反響があったのは、味もさることながら、日本ではあまり馴染みのないジョージア料理という話題性の力が大きい。「ジョージア料理ってどんな料理なんだろう?」と興味をかき立てることに成功したのだ。

もちろん、高い品質を追求することは大切だ。だが、こうした事例が示す通り、飲食店の商品をヒットさせるためには、それ以上に話題性が欠かせない時代になっているということなのだ。モスが復活をはたすには、その点を強く意識した打ち出しを行う必要があるだろう。

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