6期連続で既存店客数は前年割れ

モスバーガーは客離れで長らく不振が続いている。既存店の客数は14年3月期~19年3月期まで6期連続で前年割れが続き、既存店売上高も長らくさえない状況が続いている。この客数減の時期と先述した大量閉店の時期は重なっており、不採算店の閉鎖を進めてきたといえる。

20年3月期は客数が1.9%増と前年を上回り、既存店売上高も4.9%増と伸びてはいるが、これは18年8月に発生した食中毒による落ち込みの反動と考えられる。既存店売上高は当初目標(8%増)を大きく下回っている。この当初目標は食中毒発生直前の18年3月期と同じ水準(18年3月期比100%)としていたので、これを下回ったということは食中毒前の水準には達していないと言っていいだろう。

一方で、新型コロナウイルスの影響を考察する必要もある。モスは2月に3店を休業し、13店で営業時間を短縮。3月は15店が休業し、249店が営業時間を短縮した。また、3月は外出自粛の影響も大きい。結果として既存店売上高は2月が15.9%増と大きく伸びていたが、3月は0.9%増と微増にとどまった。

テイクアウト需要で3月4月は売上高プラス

ただ、外出自粛期間が生じたことは、むしろモスのようなファストフードにとってはテイクアウト需要が高まるなど、必ずしもマイナスの影響だけではない。

日本フードサービス協会の調査によれば、3月の外食売上高(全店ベース)が17.3%減、4月が39.6%減と大きく減った一方で、ハンバーガーチェーンを含む洋風ファストフードは3月が0.9%減の微減にとどまり、4月は2.8%増と伸びている

モスも3月の既存店売上高が前述の通り0.9%増、そして4月は3.7%増とプラスだった。ライバルのマクドナルドは、3月が0.1%減と微減だったものの4月が6.5%増と大きく伸びている。いずれもテイクアウト需要が下支えしたため、大幅減収にはならなかったのだ。こうした状況から、新型コロナがモスの20年3月期の既存店売上高に与えた影響はプラス面とマイナス面が同等で差し引きゼロといったところではないだろうか。

以上を総合的に考えると、現在のモスの状況は良いとはいえない。既存店売上高が当初目標を大きく下回ったのが致命的事実で、食中毒や新型コロナがなかったとしても業績は上向いていないということができる。