専門人材が少ない日本も変わりつつある
これに対して日本企業は海外企業に比べて専門人材が少ないと言われる。現場のオペレーションレベルの専門家はいても、技術の変化に対応し、イノベーションを生み出す高度の専門人材は限られている。それは当然かもしれない。大卒後、社内教育やジョブローテーションによってゼネラリストを養成することが至上命題となっていたからだ。
しかし、近年では様相が変わり、AI人材などデジタル技術者の獲得に奔走している。経済界も日本型採用・育成方式の問題点にようやく気づき、経団連は新卒一括採用方式や終身雇用など日本型雇用システムの再検討を提言している。また、年功序列で画一的な待遇が、AIやデータ分析にたけた優秀な若年層や海外人材の獲得を難しくしていることから、欧米のジョブ型採用との併用を呼びかけている。
日本企業の低学歴志向や経営陣の選抜方法も見直すべき
経団連の中西宏明会長もこう言っている。
「改善すべき項目はずいぶんある。今の雇用システムが典型的で、ゼネラリストとして採用し、そのキャリアを積んでいく中でいろんな仕事をさせて、最後により高い地位にどうやって昇進させていくかという仕組みが、全部一括採用と終身雇用とセットになっている面もある。新たなグローバル競争社会の中で、これ一本ではうまくいかないという反省の時期にきているのではないかと思います」(19年12月9日の定例記者会見)
言うまでもなく、この背景には日本的な採用・育成システムでは世界との競争に勝てないという危機意識がある。しかし、長年染みついた慣行を変えていくのは容易ではない。何より日本や海外の高学歴の優秀なAI技術者など専門家を獲得しても、“低学歴”の経営陣が使いこなせるのかという問題もある。
以前、ビッグデータブームのとき、企業はこぞって統計学の知識を持つデータサイエンティストの獲得に力を入れたが、結局、使いこなせずに企業を去った技術者も少なからずいた。
新卒一括採用の見直しも大事なのだろうが、並行して日本企業の低学歴志向や経営陣の選抜方法も見直すべきではないか。