MBAは頭でっかちのイメージ

簡単に言えば、新しい変化に対応するには高学歴の頭脳が必要ということだ。確かに日本の大手企業の役員や経営者は大卒止まりの人が多く、大学院の修士号や博士号を持つ人は少ない。世界の経済人とは大きく違う点だ。

ちなみにグローバル企業と言われる日産自動車には外国人の役員も相当数いる。しかし、役員の経歴を見ると、日本人は社長以下、大卒止まりが圧倒的に多い。それに比べて外国人役員は大学院卒が目立つ。技術系だけではなく、文系でも心理学修士や会計学修士、とくに多いのはMBA(経営学修士)ホルダーだ。

なぜ日本企業には大卒止まりが多く大学院卒が少ないのか。7~8年前に、大手企業の人事部長にその理由を尋ねたことがあるが、その答えが今でも忘れられない。そのときはMBAをなぜ採用しないのかについてこう言った。

「どうも頭でっかちのイメージがあり、ゼロから鍛える新人としては正直使いにくい。また、MBAホルダーだから採用に有利となるということはありません。学卒と同じ目線で選考しています。どんな人であれ、入社後の10年間は下積みの時期です。どんな仕事でも耐えられる根性と忍耐力がなければだめです」

余計な学問を身につけた大学院卒は必要ない

この発言の背景には日本的な新卒一括採用方式がある。何色にも染まっていない真っ白な新人に対して、入社1~2年の現場実習を経験させ、その後は営業、次は経理などと若いうちは何カ所も職場を経験させるジョブローテーションという日本的な育成方式がある。人事部長もその中で鍛えられてきたし、さらに役員や社長もそうしたコースを歩んできたのであり、だから余計な学問を身につけた大学院卒が必要ないという理屈だ。

これは理系出身でも同じだ。一般的に理系の修士卒は少なくないが、大手電機メーカーの採用担当者もこう言っていた。

「修士卒の応募者が多いために結果的に修士の合格者が多いのですが、社内では学部卒がほしいという声がある。逆に修士に進むと本人の志向が絞られてしまうからです」

また「何も大学院を出なくても社内にはちゃんと基礎から教える教育機関があるので大丈夫」とも言っていた。