「大学に行かなくても成功した人」はいるが…
出願者が定員を下回り、不合格者がいないため合格に必要な最低偏差値が測定できない大学のことをボーダーフリー大学、略して「Fラン大学」などと言ったりする。
そうしたFラン大学なんか行っても無駄だという意見もあるようで、その理由に、「大学に行かなくても成功した人はいくらでもいる」ことが挙げられることもある。
しかし、それは「極端な事例による構成」(ECF:Extreme Case Formulation)と言われる表現方法であり、事象を正確に表しているとは言えない。
大学に行かなくても成功した人がいる、だから大学に行く意味はない、というのは、小学1年生でも小学6年生よりもピアノのうまい生徒がいる、だからピアノの練習には意味がない、といっているのと同じで、極端な事例を持ち出して安易に一般化しているだけなのだ。
事象を正確に比較するためには、できるだけ多くのサンプルを集め、条件をそろえて比較する必要がある。例えば、同じような学力で同じ地域に住んでいて同じ仕事に就いている大卒100人と非大卒100人の平均年収を比較する、といったことである。
また、欧州のように大学を絞って職業教育に力をいれるべきであって、Fラン大学はつぶしてしまえ、という乱暴な主張もあるが、そうした社会の仕組みの話と、今ある枠組みの中では大学に行った方が良いという話は全然別の話であることにも注意が必要だ。
「学校の勉強が仕事の役に立たない」は本当か
そうはいっても、学校の勉強なんて仕事の役に立たないよ、という主張もあるだろう。
それはおそらく、その人が「学校の勉強が必要ない」仕事に就いているだけで、世の中の仕事のすべてに学校に勉強が役に立たないわけではない。
たしかに、対人スキルが中心になる仕事や体力や技能が必要な仕事では、学校で学んだことを活かす機会は少ないかもしれないが、学校の勉強が仕事の役に立たない、という一部の偏った意見を真に受けてはいけない。
そんなことはちょっと考えればわかるはずで、例えば、医者は医学部で学んだことを生かしているし、医療関係者はほぼ全員そうだろう。弁護士も公認会計士も勉強しないと資格を取れないし、建築家も大学で学んでいる。プログラマも、プラントエンジニアも、クルマのエンジン設計者もみんな大学で学んだことを活かして仕事をしている。
学校の勉強が仕事の役に立たないというのは前述のECFの典型だ。