ドイツでは新規感染者がいても経済活動再開をする
5月7日までの緊急事態宣言は、現在のところ5月末まで延長されました。5月14日、21日に見直しが行われるとのことですが、どのように新型コロナウイルスを収束させ、経済を再開するのでしょうか。多くの方が疑問をお持ちだと思います。
米国でも、ドイツでも一部の地域で経済の再開が行われています。PCR検査数の差はあるものの、感染者の数は日本と比べ物にならないくらい両国は多いのです。
5月12日現在、ドイツでは、17万人強が感染し、約7700人が亡くなっていますが、経済活動の再開を進めています。日本では、感染者数は1万6000人弱、死者数は700人弱です。
ドイツでは、ピーク時に1日の感染者が7000人を超えていたのが1000人程度まで下がったことなどが経済活動再開の要因ですが、再度の感染拡大を防ぐための「緊急メカニズム」も用意しています。それは、各地域で「人口10万人当たり、週に50人を超える新規感染者が出た」場合に発令されるとしています。
この「緊急メカニズム」の発令条件を日本に当てはめてみました。「10万人当たり週に50人」ということは、1日当たり7人強です。東京都の人口は約1300万人=10万人の130倍です。ということは、1日に900人超(7×130)の新規感染者で「緊急メカニズム」が発動となります(※日本全体で見れば、1260倍して考えれば、1日当たり8500人強ということになります) 。
東京都では、新規感染者のピークは200人程度でした。最近では50人を切る日も少なくありません。その数字では、ドイツでは「緊急メカニズム」の発令には至りません。
政治家たちは「経済自粛のツケ」をどれだけ国民に回す気なのか
もちろん、私は感染爆発していいと言っているのではありません。
日本は、米国やドイツと比べて、今のところはある程度感染を抑え込めていることは間違いありません。そのことは評価すべきです。しかし、感染が下火になっている状況で、いつまでも経済活動を「自粛」させていては、経済がおかしくなることは明らかです。先に見たように、すでに青息吐息の企業が多く、それを放置すると国を誤ることにもなりかねません。
緊急事態宣言を発動し、自粛要請や指示などを行えば、政治家、とくに、普段マスコミからあまり注目されていな都道府県知事はテレビなどでの露出が増えていいかもしれません。
しかし、あまりにも経済を締め付けることは、結果的に自身の支持基盤をなくすということを認識すべきではないでしょうか。東京都の場合には、財政が豊かですから、緊急事態を長引かせて、バラマキをすることもできるでしょうが、その他の地域はそうではありません。いずれにしても地元経済を殺したら元も子もないことを強く認識してほしいものです。
最後に図表3に米国の厳しい現状を示しておきます。米国の感染者数は130万人を超え、死者も約8万人に上っています。
長い間景気指標の分析をしてきましたが、米国のこれほど厳しい数字を見たことがありません。とくに非農業部門の雇用者数の減少に注目してください。前回も、3月の数字の減少(マイナス88万人)をとりあげましたが、その比ではありません。マイナス2053万人です。数字の間違いではありません。4月ひと月でそれだけの雇用が失われたのです。失業率も一気に10%以上悪化しました。GDPの7割を支える個人消費も大幅マイナスです。
そういう状況ですので、大統領選挙まで半年を切った米国では経済再開へ踏み込まざるをえないということもあると思います。一方、財政支援も日本の比ではないほど行っています。
日本が経済再開に慎重なことは理解できることではありますが、財政に余裕がなく、経済的な底力も米国やドイツよりも格段に低い日本では、経済にもう少し配慮が必要だと考えます。軸足を「経済再開」とするためにも、新規感染者数などの基準や再開のためのルールを早急に整備してほしいものです。