クレーマーに対しても「次回の入荷はわかりません。会社の方針としてわからないことについて曖昧な説明をしてはならないとなっています」とはっきり答えるようにする。

日本語は、とかくはっきり表現することを避ける傾向がある。それがかえって問題を引き起こすことになりかねない。わからないことをわからないと説明することは、なんら問題のある行動ではない。むしろお客様に対する真摯な姿勢といえるだろう。

あえてクレーマーに協力を求めるフレーズは有効

ポイント②「落ち着いてください」とは言わない

「マスクを隠すな、今すぐ出せ!」と感情的に言い立てる客に対して「落ち着いてください」と言うのは無意味だ。意味がないどころか相手の感情を逆なですることになりかねない。

クレーマーは、「自分は顧客だから従業員よりも偉い」ということを前提にしている。「落ち着いてください」などと言われると従業員からたしなめられているようで許せない。逆に言えば相手の自尊心をくすぐれば意外と話がクローズしていくことがある。少し具体的に見ていこう。

まず店員としては「御不快を与えて申し訳ありません」という挨拶からはじめていこう。これは具体的な行為に対する謝罪ではなく枕詞のようなものだ。「あなたの話を聞く姿勢をもっています」ということを伝える意味がある。

そのうえで「ご存じのように新型コロナウィルスでみなさまに御迷惑をおかけしております。この事態の解決のためにご協力ください」と流していくことになる。

相手の満足度を高めて矛を下ろさせる

ここでは2つの点に注意したい。まず新型コロナウイルスという会社とは関係のない事情でみんなが負担を強いられていることを示すことだ。クレーマーに対して言外に「みんなが苦労しているなかで自分だけうまくやろうと考えていませんよね」と伝えることになる。次に「ご協力ください」とあえて相手の協力を求めるようなフレーズで終わらせる。

何かを命じられるのにクレーマーは耐えられない。だが「頼られる」というのは意外に慣れていない。頼られるというのは、それほど自分を評価してくれているということだ。クレーマーも頼られると自尊心をくすぐられ、「仕方ない」ということで終わることがよくある。

クレーマー対応は心理戦という側面も多分にある。なんでもかんでも「それは違います」「お断りします」と伝えることだけがすべてではない。相手の満足度を高めて矛を下ろさせるのがベストな解決だ。