ペットボトル1本分の水分不足で意識障害のリスク

私たちは「水に生かされている」と言っても過言ではありません。そのため、体内の水分が不足すると、急速な体調の異変はおろか、ときに生命にまで危険が及ぶ深刻な事態に直結してしまいます。

一般的な目安としては体内の水分量の、

●1~2%が不足すると、意識レベルが低下して意識障害のリスクが高まる。
●2~3%が不足すると、体温調節機能に支障が出て循環機能に悪影響が出てくる。
●5%が不足すると、運動機能(特に持久力)が低下してくる。
●7%が不足すると、幻覚や妄想の症状が現れる。
●10%が不足すると、生命の維持ができなくなる。

と言われています。

とくに体内に蓄えられる水分量が減少してくる高齢者は要注意です。

例えば、「体重50kgの高齢者」の場合、体を構成するのに必要な水分量は50kgの50%で、約25kg(25リットル)という計算になります。

25リットルの1~2%と言えば「250~500ミリリットル」で、コップ1杯分からペットボトル1本分程度。このわずかな水分が不足しただけで脳の機能に支障が及び、意識障害に陥るリスクが高まってしまうということ。

だからこそ、人は歳を重ねるほど「意識的な水分摂取」が不可欠になるのです。

水をたくさん飲めば、認知症は改善する

厚生労働省の推計によると、2025年には65歳以上の5.4人に1人が、2040年には4.1人に1人が認知症になると予測されています。

山下哲司『なぜ水を飲むだけで「認知症」が改善するのか 1日1.5リットルの水分補給が命を救う』(KADOKAWA)

私たちが認知症に大きな不安を抱くのは「認知症になったら治らない」と考えられているからです。現代医療では、薬によって進行を遅らせることはできても、完治させることはできないというのが認知症についての定説となっています。

しかし、そんなことはありません。しっかり水を飲んで体内の水分不足を解消するケアを実践すれば、認知症の症状を大きく改善させることができます。

私が師と仰ぐ国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授も、「十分な水分摂取を行うだけで認知症の高齢者の7割はその症状が消失し治る」と述べています。認知症を脳疾患ではなく「精神疾患」と捉え、投薬では治らないけれど、水分摂取を主とした生活改善によるケアならば改善・治癒できる、というのが竹内教授の考え方です。

水を飲めば認知症が治るというのは理に適った論理的な発想であり、決して不思議なことではないのです。