食事に気を付けることは、がんの予防にどれくらい効果があるのか。医師の一石英一郎氏は、「確かに野菜や果物に一部のがんリスクを低下させるという研究結果はある。だが、食生活よりも先に改善するべきことがある」という——。
※本稿は、一石英一郎『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)の一部を再編集したものです。
食事ががんに及ぼす影響
食べものでがんは防げるのでしょうか? むろん、そうした研究は世界中で続けられています。
例えば2007年に、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究機構(AICR)が報告した「食物、栄養、身体活動とがん予防:世界的展望」があります。そのなかで食物、栄養と、がんのリスクとの関連についてエビデンスの強さを5段階(「確定的」、「ほぼ確実」、「証拠が限られ示唆的」、「相当の影響があるとは考え難い」、「証拠が得られ結論が出ない」)で評価しています。
それによると野菜は口腔・咽頭・喉頭・食道、胃のがんに対してはリスク低下が確定的で鼻咽腔、肺、結腸・直腸、卵巣、子宮体部などのがんにはリスク低下がほぼ確実とされています。ただし、膵臓、胆嚢、肝臓、乳房、前立腺、腎臓、膀胱などについてはその効果は触れられていません。
果物は口腔・咽頭・喉頭、食道、肺、胃のがんに対してはリスク低下が確定的で、鼻口腔、膵臓、肝臓、結腸・直腸のがんに対してはリスク低下がほぼ確実とされています。
牛乳は結腸・直腸がんでリスク低下が確定的とされ、膀胱がんでリスク低下がほぼ確実とされました。
一方で、アルコールは口腔・咽頭・喉頭、食道、乳房でがんリスク増加がほぼ確実(結腸・直腸は男性で確定的、女性でほぼ確実)、肝臓ではリスク増加が確定的とされています。