水を飲んで便秘を防げば認知症リスクも下がる

さらにもうひとつ。

人は高齢になると大腸まわりの筋力の低下によって便秘になりやすくなります。大腸の「蠕動ぜんどう運動(便を送り出す動き)」が弱まることで排便しにくくなるのです。

実は、体の器官でもっとも水分を保持できるのが筋肉です。それは逆に言えば、水分不足による機能低下の度合いがいちばん大きいのも筋肉だということ。

だから水をたくさん飲む。そうすることで筋肉にしっかり水分が届いて大腸の蠕動運動も活発になり、便秘予防になります。

また高齢になって水分が不足してくると便が固くなりがちです。普段から水をしっかり飲んでいれば、便に水分が含まれて適度にやわらかくなり、便通もスムーズになります。

介護の世界では「認知症を予防するうえで便秘の予防・解消は不可欠」というのが常識になっています。

便秘による腹部膨満感や腹痛が引き起こす体調不良や苦痛、不快感は食欲の低下につながります。栄養状態が悪化すれば、さまざまな身体機能の低下を招くことにもなります。高齢者の場合、そこから寝たきりや認知症に進行してしまうリスクが高いのです。

十分な水分摂取によって健康リスクが高い便秘を予防することが、ひいては認知症の予防にもつながります。

1日に最低1.5リットルの水を飲む

水をたくさん飲むことは認知症予防や認知症の改善のための重要な生活習慣ですが、具体的にどのくらいの量を飲めばいいのでしょうか。

目安となるのは「1日に1.5リットル」です。当然、これには根拠があります。

私たちは尿や汗、さらには不感蒸泄(無意識に発生する皮膚や呼気からの蒸発)などで、毎日2.5リットルもの水分を体外に排出しています。ということは、最低でも1日に2.5リットルの水分を補わなければ水分不足状態になってしまうのです。

ただ、水分摂取の方法は水を飲むだけではありません。実は、毎日の食事からも水分を摂っています。料理に使われている食材が含む水分を摂取しているということ。肉類は約70%、魚類や卵は約75%、野菜に至っては約90%が水分です。そのため、朝昼晩と1日3回、しっかりと食事をしていれば、それだけで1日に約1リットルの水分を摂取できます。

そのため、1日に約1.5リットル以上の水を飲めば、排出した水分を補ってプラスマイナスゼロにするための水分を摂取できるというわけです。

とくに水分が不足しがちな高齢者にとって、1.5リットルは最低限の量。できる限り、それよりも多く飲むことを心がけてください。