イスに座るだけで腰の関節に負担

デスクワーク症候群にまつわる研究・調査の結果は、海外で頻繁に発表されています。非常に関連が深く、世界的にも有名なのが、スウェーデンの腰痛研究の権威、アルフ・ナッケムソン氏による発表です。

その内容とは、「生きた人間の腰の関節=第3腰椎と第4腰椎の間」の椎間板に電極を直接挿入し、椎間板にかかる圧が姿勢によってどのように変化するのかを測定したものです。その結果、自然に立っているときにかかる圧を100とすると、イスに座っただけで140に、座って前かがみになると185にまで跳ね上がると判明しています。

これはまさに、関節疲労を後押ししてしまう話と言えるでしょう。座って前かがみになる体勢は、椎間板への圧力を大幅に高めるだけでなく、お話ししてきたように、ストレートネックを悪化させたり、仙腸関節を固まらせたりする最大要因です。

そのうえ、圧が高まっている椎間板自体には、神経が通っていません。“いつもどおりの姿勢”で楽にイスに座っていると思っても、関節へのダメージは確実に加わり続けているのが実態なのです。

1日中座っている人は死亡リスクが40%アップ

また、オーストラリアのシドニー大学が中心になって行われた研究では、同国内の45歳以上の男女22万人を約3年間追跡し、「1日に座っている時間」と死亡率の関係が調べられました。そして、「1日に座る時間が4時間未満の人たち」と「11時間以上の人たち」を比較すると、後者のほうが死亡リスクは40%も高まることがわかりました。座っている時間が長ければ長いほど、死亡リスクは高まるという結果が出ているのです。

念のために言っておくと、私はこうした調査データの類いを、普段から重視しているわけではありません。何万人、何十万人と接してきた患者さんたちの中には、当然ながらデータから導かれる結果や、いわゆる“教科書的なセオリー”では太刀打ちできないケースが多数存在します。

それでも、間違いなく今後も日本人の関節に襲いかかるデスクワーク症候群という危機を認識していただくためには、こうしたデータの提示も必要な手段の1つと考えています。