休日、長めに寝ても「すっきりしない」は要注意

慢性的な不眠状態が続き、睡眠不足が蓄積されていくことを、「睡眠負債」と言います。

「睡眠負債」という表現で、睡眠不足が続くことに警鐘を鳴らしたのは、スタンフォード大学のデメント教授。「眠りの借金が溜まると、脳や体にさまざまな機能劣化が見られる」と広く訴えたのでした。それが、1990年代のことです。

「睡眠負債」という言葉が日本で使われ出したのはつい最近のことですが、睡眠研究に携わっている人たちは、少し前から使っていた言葉でした。

睡眠不足は、言い換えれば“眠りの借金”です。つまり、借金ですからいつかは返さなければなりません。

2~3日睡眠不足が続いたくらいなら、借金は少ないですからいつもより少し長く眠れる日があればすぐに返せます。しかし、3~4週間も睡眠不足が続いて借金がふくらんでしまうと、1~2日いつもより長く寝ても返せなくなります。さらに睡眠不足が続いて借金が雪だるま式に増えていくと、ついには返済計画も立てられなくなってしまう。それが、睡眠負債というものです。

休日にいつもより長く寝ても、目覚めが悪いとか、すっきりしないとか、日中に眠気が出てくるという人は、眠りの借金が溜まってきている可能性が十分にあります。

「40分の寝不足」を取り戻すには3週間かかる

睡眠負債の概念の提唱のもとになった、健康な8人を連日14時間、無理矢理ベッドに入れた際の睡眠時間の推移に関して、1990年代に行われた実験があります。実験前の8人の平均的な睡眠時間は7.5時間。彼らに1日中、14時間ベッドの上で好きなだけ寝てもらうようにしました。その結果、1日目はみな13時間、2日目もみな13時間近く眠っていました。

ところがその後は長く眠ることは無理で、徐々に睡眠時間が短くなり、1週間もすると、5時間も6時間もずっとベッドの上で起きているという状態になります。結局、3週間後に睡眠時間は平均8.2時間に固定しました。この8.2時間がこの8人の生理的に必要な睡眠時間だと考えられます。長い期間、体が必要とする睡眠時間より毎日40分短い睡眠時間であった彼らは「毎日40分の蓄積した睡眠負債」を抱えており、この長年の睡眠負債を返すためには、毎日好きなだけ寝ても3週間かかったということが如実に示されました。

睡眠不足が借金になるなら、寝溜めして“眠りの貯金”をつくっておけばいいではないかという考えもあるかもしれません。実際のお金の話であれば、貯金があるのなら借金をしなくても済むことはあります。