「ペイペイ」はインドのスタートアップの技術を活用

他にもインドのスタートアップと連携し、彼らの技術やサービスを日本で日本企業が活用する事例が少しずつ出はじめてきている。

その一つが、旧高額紙幣の廃止をきっかけに急成長を遂げたペイティーエムだ。ソフトバンクとヤフーが立ち上げ、2018年12月に利用客に100億円を還元するというキャンペーンを打って話題をさらった「PayPay(ペイペイ)」は、ペイティーエムのQRコードの仕組みを採用している。

日本は2018年以降、政府がキャッシュレスの旗を振ったことでLINEやメルカリなど複数の企業が一気にスマホ決済に参入した。そんな中、インドですでに成功しているペイティーエムの技術を使うことで、ソフトバンクやヤフーは自力で技術開発をせずにサービスを展開することができた。

小売企業もインドの技術に注目している。物流のシステム開発メーカー「グレイオレンジ(GreyOrange)」が手掛ける倉庫用のロボットは、AIを使って需要予測をして、ピッキングをする作業員の前まで商品が入った棚を必要なタイミングで移動させることができる。作業員が無駄な移動をしなくても済むため、省人化や作業の効率化につながるのだ。

深刻な人手不足解消につながるとして、日本では大和ハウス工業がグレイオレンジとタッグを組んで販売攻勢を掛けている。

大手の中にはインドに開発センターを設けている日本企業もあるが、必ずしも自力路線だけで考えるのではなく、最新の技術を追いかけるインドのスタートアップと連携することも一つの選択肢になる。AIをとってみても、マシンラーニングやディープラーニングといった新しい技術が次々と生まれる。めまぐるしく変わる新しい技術を身につけた技術者を全て自社内に抱えるのは至難の業だからだ。

日本の「ただ乗り」に不満の声

徐々にコラボレーションの事例が出はじめたとはいえ、正直、インドでの日本企業の評判は芳しくない。

インドのスタートアップが特に嫌うのは「情報へのただ乗り」だ。

スタートアップと大企業といっても、当然立場は対等。相手からの情報を求めるなら、こちらからも提供する必要がある。ギブ&テイクの関係でなければ長続きするはずもない。なのに、情報を得るだけ得て、次のアクションについて何も方針を出さないという日本企業が少なくない。

しかも、アポイントを取る時に「目的」を伝えないことも多いようだ。時間を取らせるのだから、相手にとっても有意義なミーティングになるように気を配る必要があるのはいうまでもない。ほかにも、ミーティングばかりをやって実働につながらないとか、話は聞くが意思決定ができないというような不満の声もよく聞く。

日本の企業はこのままだと、インドのスタートアップから「自分たちにベネフィットがない」と判断され、どんどん敬遠されてしまうだろう。