「仕事以外」の関係作りが苦手な日本人

インドのインナーサークルに入るためには、もっと心を開く必要があるとも感じている。日本人の多くは仕事以外のコミュニケーションが得意ではない。だが、インドで人脈を構築するためにはこの欠点を克服する必要がある。

今でこそ、インド人の友人がたくさんいる私も、最初は手探りだった。時間があれば現地の人とお茶を飲み、雑談をしながら相手の考えを知って、それが次第にビジネスにも結びついていった。

日本人は用がなければ人に会いに行かないが、インドでは「無駄なお茶を飲むこと」も意外と大事なのだ。

もともと、カースト制度があったことも影響していると思うが、インド人は上下関係を気にする人が多い。「自分の上司や取引相手が信用できるのか」「一緒に仕事をしてメリットはあるのか」といった人との関係性を大切にする。

スタートアップは経営者同士がつながっているということを考えても、彼らが人に紹介したいと思えるようなビジネスパートナーとなるためには、「人間的な魅力」を伝える必要があるだろう。

「投資の目的」を明確にしてスピードアップ

インドへの注目度が徐々に高まるにつれ、インドに拠点を作る日本企業が増えてきているが、いくら拠点を作ってもそれだけでは意味がない。本社が本気でやる気になって、現地に意思決定の権限を与えるなど、決断のスピードを上げていく必要がある。

インドではスタートアップの資金調達の情報が入ってきてから、わずか3カ月で契約するケースも少なくない。日本企業が数年かけて信頼関係を作って契約をしようとすると、どうしても取り残されてしまうのだ。

「投資の目的」を明確にすることも重要だ。純投資なのか、それともインドで事業を共同で展開したいのか、第三国にビジネスモデルを輸出したいのか――。

インドのスタートアップには、決算の内容を見ればバリュエーション(企業価値評価)が高すぎると感じるものも少なくない。結局は需要と供給の問題としか言いようがないかもしれないが、それを受け入れて投資するかどうかは、目的に大きく左右される。

目的が曖昧なほど意思決定のスピードが遅くなるので、日本の企業はこの点に注意すべきだろう。