列車1本3000人のうち、1人が死亡するリスクも

本格的な感染期に入った場合、満員電車はどれほどのリスクになるのだろうか。ダイヤモンド・プリンセス号では約3700人の乗員乗客中、700人以上に感染が確認されており、感染率は約20%だ。またWHOが中国で新型コロナウイルスに感染した約4万5000人を分析したデータによると、感染者の致死率は現時点で2.3%という。厳密には年齢により感染リスクは大きく異なり、10代~40代は0.2~0.4%程度であるのに対し、50代は1.3%、60代は3.6%、70代は8.0%、80代以上は14.8%にも達する。

満員電車の乗客はクルーズ船よりも密着しているが、クルーズ船ほど長期間、同じ空間に閉じ込められているわけではない。乱暴な計算だが感染率がダイヤモンド・プリンセス号の半分の10%、致死率は10代~40代の中間値0.3%とした場合でも、満員電車1列車あたりの乗客3000人のうち、1人が死亡する計算になる。あくまでこれは机上の計算であるが、新型コロナウイルスの蔓延まんえんは社会にとって大きなリスクとなりうることが分かるだろう。

交通制限は「生活と経済活動に大きな影響を与える」

こうした状況に対して、赤羽一嘉国土交通大臣は25日、鉄道による感染拡大を防止するためにテレワークや時差通勤の推進が重要との観点から、鉄道事業者を通じて鉄道の駅構内や車内アナウンスで利用者に対し、時差通勤の協力を求める呼びかけを開始したことを明らかにした。

しかし、その一方で「公共交通機関の利用を制限すると国民生活や経済活動に大きな影響を与えることから慎重に判断する必要がある」として、現時点では交通の遮断や制限までは検討していないともコメントしている。

実際、感染が拡大したとしても、医療関係やインフラ関係の従事者など医療体制や都市機能を維持するための人員の移動は確保する必要があり、全面的な交通遮断は現実的ではない。また実際に、そのような利用制限を行うとしても、どこまでが都市機能の維持に必要な業種であるか、明確な線引きは困難だ。24日に政府の専門家会議が示したように「今後1~2週間が感染拡大か終息かの瀬戸際」という状況においては、答えを出せるような時間的余裕もないだろう。

結局、電車の運行を維持しながら、企業や利用者の自主的な取り組みによって、できる限り混雑を緩和し、少しでも感染リスクを下げる以外に手の打ちようがないのが実情だ。ではそれは可能なのだろうか。