突拍子なく思えるネタの裏側に地道で泥臭い作業

たとえば今回の絵本なら、「子供ってよくわからないものを大事にするよね」というのが“あるあるネタ”になる。だが、そこからのストーリー展開はヨシタケ氏ならではのものだ。
主人公の女の子は「この輪ゴムを使って何をしようか」と想像の翼を広げるのだが、それは「えっ、輪ゴムでそんなことする?!」という突拍子のないものに読める。バリエーション豊かな「輪ゴムの使い方」はぜひ絵本を読んでいただくとして、どうやったらこんなアイデアを思いつくのだろうか。
ヨシタケシンスケ『わたしのわごむはわたさない』(PHP研究所)

これは別に天才的なひらめきとかではなくて、実はすごく理屈っぽい考え方をしているんです。輪ゴムを構成する要素を洗い出すと、「丸い」「伸びる」「束ねる」などが出てきますよね。それらの要素を取り出して、「輪ゴムがものすごく大きな丸になったらどうなるか」「輪ゴムがどこまでも伸びるとしたら何が束ねられるか」といったネタを書き出していく。

これとこれは同じ「伸びる」のネタだから一つでいいなとか、あるいは「伸びる」のネタはすでに決まったから、もう一回「伸びる」のネタを使うなら並べて出すよりは少し距離を離した方が新鮮に映るなとか、絵本に載せる要素を一つひとつ吟味していく。かなり地道で泥臭い作業をしています。