教えてもらうのは、師匠が学んだ本と、師匠が尊敬する人の本です。どの業界でも、成功する人は同じ本を読んでいます。その多くはベストセラーというよりも、地味ながら師匠から弟子へ長年にわたって伝えられ、重版され続けている定番書です。

自分で良書を探す際の基準もお伝えしておきましょう。大原則は著者で選ぶこと。経営者ならサラリーマン社長ではなく、創業者と中興の祖のほうが名著に当たる確率が高い。鉄則は、そこに「結果」ではなく「原因」が書かれていることです。話題になる本の中身は、多くが著者の成功体験ですが、成功したという結果ではなく、成功した原因(理由)、真似できることについての情報がなければ意味がありません。

書店で平積みされている流行りの著者の本の多くは、著者自身に人気があり、多くのファンがいたから成功したケースが多い。普通のビジネスパーソンにとっては読んでも再現性がなく、勉強になりません。

③勧められた本はすべて読み、線を引く

読むべき本が見つかったら、必要と感じた箇所に赤線を引いていきます。線を引く価値があるのは、固有名詞、数詞、動詞、自分の事業にインパクトを与えそうな情報です。日本語は固有名詞の多くがカタカナか漢字だから、見つけやすくていい。

「自分の事業にインパクトを与えそうな情報」のピックアップには、会計の本を読んで勉強しておくことが必要です。これは業種を問いません。桜井久勝さんの『財務諸表分析』(中央経済社)が名著です。自分の会社や事業の損益計算書、貸借対照表のどの勘定科目にインパクトを与えたいのか、売り上げを上げたいのか、仕入れ値を安くしたいのか等々を意識して、何をすれば会社や業界、お客様が喜ぶのかを考えながら読めば、使える情報が手に入ります。

一方で線を引いてはいけないのは、実は「自分が共感する部分」です。あなたの自尊心は満たされても、そこに学びはありません。結果が出ない人というのは、自分の意見を肯定されることを好みます。「肯定されたい欲」には中毒性があって、似たような本を繰り返し読んでしまうので情報量が増えません。これに打ち勝つためには、「これから出会う情報のほうがもっと好きになる情報かもしれない」という感覚を持って、新しい考え方やノウハウを受け入れることです。「読んだときに多少嫌悪感があっても、なぜか気になる一文」にこそ、線を引くべきです。

④師匠とセンスをすり合わせる

師匠から勧められた本を読み終えたら必ず、自分が線を引いた箇所と、師匠がいいと感じている箇所が同じかどうか、すり合わせてください。違ったらもう1度読み直し、わからなければ師匠に教えてもらいます。このとき、わかったようなふりをして話を合わせるのは厳禁。必ず腑に落ちるまで教えを乞います。