最初は効果のあった「アベノミクス」

第二次安倍内閣が発足したのは、2012年12月のことでした。2008年のリーマンショックやそれに続く世界同時不況、2011年の東日本大震災を経験し、日本経済は歴史的にもかなりしんどい時期でした。2007年に530兆円を超えていた名目国内総生産(実額の国内総生産)も500兆円程度に落ち込んでいました。

安倍首相の経済政策の特徴の第一は、なんといっても「アベノミクス」です。最初は関西あたりでは「阿倍野のミックスジュース」などと揶揄されたことはありましたが、疲弊した日本経済の立て直しに一定の効果を示しました。

表でも分かるように、名目国内総生産は徐々に回復し、インフレやデフレを調整した後の実質の国内総生産も、一時期を除きおおむね成長しています。現在は戦後最長の経済成長を記録しています。ただし、副作用も大きいのですがこれは後述します。

お金をじゃぶじゃぶに市中につける

アベノミクスは当初、①大規模な金融緩和、②機動的な財政支出、③成長戦略を「三本の矢」としてスタートしました。

その中でも、2013年4月から始まった「異次元緩和」は、金融専門家をも含めて、予想を大きく超える内容でした。マネタリーベース(日銀券+日銀当座預金)の残高を2年で倍にするというものです。

つまりは、お金をじゃぶじゃぶに市中につけるというものです。それにより、民主党政権時代に70円台まで進んだ異常な円高が是正され、株価も上昇、企業業績、特にグローバル企業の業績が拡大するという効果がありました。また、デフレに苦しんでいた消費者物価も一時は1%近くまで上昇しました。