異次元緩和も限界、銀行は青息吐息

アベノミクス、特に異次元緩和は景気の反転に貢献し、先ほども触れたように現状は戦後最長と言われる景気拡大を記録しています。しかし、弊害や問題点は小さくありません。

異次元緩和はいわゆる「カンフル剤」です。黒田東彦日銀総裁も、異次元緩和が機能していた当初2年間ほどは「早く成長戦略にバトンタッチしたい」という旨の発言をしていましたが、結局、本当にこの国に長期的成長をもたらす成長戦略はほとんどといっていいくらい何も出すことができませんでした。成長戦略には、規制緩和など、痛みを伴うものも少なくありませんが、先送りしたのです。

勤勉にコツコツ貯めた人から金利を奪うという弊害

その間に、異次元緩和だけは進み、開始当初135兆円だったマネタリーベースは、2年後には当初目標の倍の270兆円となり、現状は500兆円を超えています。効果はほとんどなくなりました。

その効果が薄れるにつれ、量的緩和だけでは不十分となり、今では政策金利である「コールレート翌日物」だけでなく、長短金利ともにマイナスに沈んでいます。

銀行は貸出金利がどんどん低下する一方、預金金利はマイナスにはなっていませんから、体力を大きく落としました。そして、勤勉にコツコツ貯めた人から金利を奪う(金利を減らす)という弊害だけが続いています。

さらには「異次元」だけが残り、日銀は480兆円を超える国債を保有するとともに大量の株式も保有しています。万が一、大きな価格変動が起きたら、それは大変なことです。そうしたリスクを負っていることを政府はきちんとアナウンスしませんし、多くの国民もこの事実に気づいていません。誠に恐ろしいことです。