「アイス支出額」は富山市もランクイン
総務省統計局が発表する「家計調査」というデータがある。それによれば、「1世帯当たりのアイスクリーム・シャーベット」の支出金額は、過去10年で15%増え、特に冬場の増加率が高くなっている。ここでも「冬アイス」の伸びが指摘されるが、上位の都市ランキング(都道府県庁所在地・政令指定都市)も興味深いものがある。
2011年から2017年までの7年間で、金沢市(石川県)が首位になること5回、残り2回は富山市(富山県)という北陸勢なのだ。2018年は大雪などの影響で、金沢市は首位から陥落し、浜松市が1位となっているが、過去10年の平均支出額ではトップとなっている。
今回は、石川県七尾市に本社を持ち、金沢市を含めて県内に14店舗を展開する地元スーパー「どんたく」の協力を得た。同社のアイス売り場の現状を紹介したい。
図表1 過去7年で「アイスの支出金額・日本一」は北陸勢(年間)
年 |
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2015年 |
2016年 |
2017年 |
2018年 |
1位 金額 |
金沢市 9,637円 |
金沢市 10,080円 |
富山市 10,059円 |
金沢市 10,969円 |
金沢市 10,976円 |
富山市 11,395円 |
金沢市 12,475円 |
浜松市 11,493円 |
2位 金額 |
鳥取市 8,794円 |
福井市 9,090円 |
金沢市 9,855円 |
川崎市 10,095円 |
岡山市 10,928円 |
さいたま市 11,008円 |
福島市 11,361円 |
山形市 11,176円 |
※出典:総務省「家計調査」をもとにした日本アイスクリーム協会資料から抜粋
ルーツは「加賀百万石の城下町」にあり
「よく『金沢市民はアイス好き』と言われますが、当社の売れ筋でも裏付けられます。和洋菓子も含めて、他の地域と比べて売れる。もともと加賀百万石の城下町で和菓子文化が根付き、太平洋戦争の空襲を免れた金沢には老舗店も多い。そうした複合要因もあると感じています」
どんたく商品部の責任者である坂下繁氏(執行役員・商品部統括部長)はこう話す。同社が県内に展開する14店のうち、本部ビルにある「新鮮館」を含めて6店が七尾市、金沢市には2店あり、2022年に3店目を計画中だ。石川県に縁がないと分かりにくいが、金沢市は加賀地方にあり、七尾市は能登地方の中心都市だ。
「金沢と能登では客層も違います。当社は『高質SM』(SM=食品スーパー)を掲げ、専門性・話題性・地域性の3視点での訴求を行います。金沢市内の店舗、特に西南部店は高質な商品もそろえ、専門性を訴求しやすいのですが、能登地方は高齢者の多い地域。自宅から近い店に徒歩で訪れる人も多く、昔からなじんだ食べ物を好む傾向があります」(坂下氏)
「冬アイス」についてはどうだろう。
「全体ではチョコレート系が上位に来ますが、ガリガリ君のような氷菓系も売れます。秋冬は氷菓系が売れない、ということもなくなってきました」
こう説明するのは、アイスの仕入れを担う山澤睦子氏(第二商品部 洋日配部 パン・アイス バイヤー)だ。約20年のバイヤー歴を持つ専門家でもある。