「おいしさの上げ底」をせず「おいしすぎないおいしさ」を守る

サイゼリヤにはさまざまな魅力があり、その根幹を私は「おいしすぎないおいしさ」であると考えています。「ちょっと待って、おいしすぎないってことはつまりおいしくないってことなんじゃ!?」と思うかもしれませんが、ちょっと違います。

チェーン店に限らず飲食店で安い料理を提供しようとしたら、当たり前ですがコストを削らなければいけません。コストを削れば料理は味気ないものになってしまいがちです。

なので、安さを追求するレストランは(あるいはコンビニやファストフードなんかでもそうですが)味気なくなった部分を別の何らかの方法で補おうと躍起になるのが普通です。

例えばコストの高い食材である肉を減らせば、それを単価の安い肉エキスのようなもので補う、みたいなことです。実際はそんな単純なものではないのですが、あくまで一つのわかりやすいたとえとしてはそういうことになります。

もちろんそういう類いの企業努力は大事なことでもあるのですが、その結果として安い外食はなんだか押し付けがましい、少しうんざりするような味になってしまうことが往々にしてあるのです。

サイゼリヤが独特なのは、そういう「おいしさの上げ底」みたいなことをあえてやらないというスタンスを、頑なに守っているところにあります。そしてその頑なさの根幹を成しているのは、サイゼリヤの素材に対する強烈な自信であると言えるかもしれません。

自由に使える卓上調味料のクオリティが高い

素材の良さに関して、もっとも目についてわかりやすい例としてはフロアに置いてあって自由に使える卓上調味料があります。具体的には、まずオリーブオイルです。

ナポリの老舗メーカーと提携して徹底した品質管理の下に直輸入されるそれは、香りの豊かさ、スパイシーさを感じるその風味、さらりとした口当たり、「こんないいオリーブオイルを自由に使っていいなんて!」と歓喜せずにはいられない素晴らしいおいしさ。

もう一つ、最近置かれるようになった粉チーズのグランモラビア。以前の粉チーズは、大衆的な店でよく見かけるタイプの紙筒入りの半乾燥製品が置かれていましたが、今はこちらに切り替わっています。

これがまた素晴らしいのです。熟成感のある硬質チーズならではの深いうまみとフレッシュな風味、塩味も丸く素材の相性を選ばないクセのなさ、よくある工業生産的な粉チーズとはまったく別物です。