筑波大学がゲノム編集トマトを開発した
厚労省の届け出制度の運用が10月、はじまりました。農水省・環境省も栽培時の環境影響などを検討し、厚労省と似た制度を作りました。
マスメディアはすぐにもゲノム編集食品が店頭に並ぶ勢いで報道していましたが、最近止まっています。なぜかといえば、そんな食品は今のところ見当たらないのです。
国産の第1号は、筑波大学の研究チームが開発した高GABAトマトになると目されています。GABA(γアミノ酪酸)は血圧上昇抑制などの効果が期待されており、もともとトマトにもわずかですが含まれています。
筑波大学は、ゲノム編集により4〜5倍のGABAを含むトマトを開発しました。1日に2つのミニトマトを食べれば、十分な量のGABAを摂れます。国内で開発中のゲノム編集食品の中では、この研究チームの研究や届け出準備がもっとも進んでいるようです。
ゲノム編集食品がすぐに店頭に並ぶとは考えにくい
とはいえ、まだ時間がかかりそう。研究リーダーの江面浩・筑波大学生命環境系教授によれば、届け出第1号は今後の届け出の規範ともなるべき存在なので、市民にもしっかりと理解されるものとすべく、準備をしているそうです。
それに、商用栽培を実現するにはまずは、種子を増やさなければなりません。高GABAトマトは、秋から栽培し12月ごろから収穫が始まります。今年はまだ届け出していないので農家では栽培できず、筑波大学での試験栽培にとどまります。
届け出が受理されれば、来年秋からやっと農家での栽培が可能になりますが、まだ種子が少ないので一部でわずかにトマトを栽培、収穫でき、関係者や理解する消費者に届く程度。「一般の店頭に出てくるのは、どう考えても再来年以降ですよ。そのときには、ゲノム編集により高GABAとなっていることをしっかりと伝えながら売ってゆきたい」と江面教授は笑っています。
もちろん、海外から輸入が始まる可能性は否定できません。アメリカでは既に、高オレイン酸大豆が栽培されています。しかし、開発企業のCalyxtによれば現段階ではわずか130農場での栽培。しかも、付加価値の高い食用油として加工販売され、知らない間に日本に、ということはあり得ません。別企業も、褐変せず棚持ちのよいロメインレタスの商用栽培を準備中と発表しましたが、店頭には登場していないようです。ゲノム編集食品は、普及にはまだしばらく時間がかかりそうです。