実はゲノム編集には3種類あり混乱に注意
実は、ゲノム編集による品種改良は、ここまで説明してきたタイプのほか、2つのタイプがあり、行政の規制も異なります。このあたりがわかりにくくて、反対派消費者団体も大混乱に陥っていますので、触れておきましょう。
ゲノムの狙ったところのDNAを切ること自体はどのタイプも同じです。タイプ1はここまで説明してきたもの。切った後に、塩基の欠失や置換、挿入が自然に起きています。
タイプ2は、短い塩基配列の鋳型も細胞に一緒に入れ込んでおき、DNAの狙ったところを切った際に、鋳型どおりの塩基配列が挿入される、というものです。タイプ3は、長い塩基配列を持つ別の遺伝子も細胞中に一緒に入れておき、DNAを切った際にその遺伝子を入れ込んでしまうものです。
外から遺伝子を入れ込むタイプ3について、厚労省は「遺伝子組換え技術を用いた食品と同様の安全性審査が必要」と整理しました。一方、タイプ1については、自然界の変化と差異がないなどとして「安全性評価は必要ない」としました。タイプ2はその中間ですが、変異が自然でも起こりうる範囲と判断されれば、タイプ1と同様に審査は必要なしとなりました。
行政の規制は事前相談という名の“審査”がある
遺伝子組換え以外の品種改良はこれまで、国の安全性評価はなく、開発した種苗企業の責任で安全性が担保されています。しかし、厚労省はゲノム編集のタイプ1については、「従来の育種技術を利用して得られた食品と同等の安全性を有すると考えられることの確認とともに、今後の状況の把握等を行うため」と称して、開発事業者に届け出を求めることにしました。
届け出の前に厚労省への事前相談も必要。同省は必要に応じて専門家らの意見も聞き、タイプ1,2,3のどれに相当するかを判断します。
長々と説明しましたが、要するに事前相談が実は、事実上の審査になっています。届け出に法的強制力はないのですが、厚労省は「届け出をしない事業者名などの公表」もあり得る、という強硬姿勢です。タイプ2、タイプ3は現在のところまだ、技術開発が進んでおらず、実用化にはほど遠いのが実情です。