10月から始まったゲノム編集食品の届け出制度。消費者団体からは、遺伝子を操作することを不安視する声も上がっている。科学ジャーナリストの松永和紀氏は、「ゲノム編集食品が健康に悪影響を与えることを示す根拠は今のところない。やみくもに不安視するのではなく科学的根拠に基づく判断が必要だ」という——。
ゲノム編集食品をめぐる報道には「責任逃れ」が多い
新聞やテレビでゲノム編集食品がとりあげられることが増えてきました。たいていこんな具合です。
1.ゲノム編集食品が近く、食卓に登場する
2.ゲノム編集食品はこれこれしかじか。安全だと国は言う
3.でも、リスクも指摘されている
4.新技術に、消費者は不安を訴えている
つまり、両論併記です。たとえば、NHKが9月24日に放送したクローズアップ現代では、科学者が「安全だ」と言い、消費者団体幹部が「ゲノム遺伝子をいじるということは非常に危険なこと」と訴え、司会者が「議論が大事」と締めくくりました。
でも、これでよいの? 私が取材する限り、科学的な見地からの賛否は五分五分ではありません。100対1、いや、もっと開きがあるかもしれません。消費者団体の挙げるリスク、不安は、科学的に否定されています。
ところが、その詳細を伝える報道は日本ではほとんどありません。日本のメディアは安直な両論併記が大好き。そうしておけば、報道の判断の責任を逃れられるから、かもしれません。
本記事は、ゲノム編集がなぜ科学者に支持されているのか、リスクがどうとらえられ対策が講じられているのか、現時点での詳細をわかりやすく解説しましょう。