「リストラはまったく考えていません」は本当か

金融・保険業は顧客管理や引受業務などに携わる多数の事務職スタッフを抱えている。こうした人たちを今後どうしていくのか。ある生命保険会社の会長は、筆者のインタビューにこう語っている。

「RPAによって業務が効率化されていくと、その分、人手がかからなくなることは当然発生します。そうなると、そこの人材を戦略的な分野にシフトさせていくことになります。事務であれば高度な引受判断業務、資産運用部門は高度の投資判断など高度のプロフェッショナルの能力が求められてきます。また、保険営業であれば人と人との関係構築に注力してもらいます。当社の契約者は全国にいますが、店舗を統廃合するのではなく、むしろお客様との関係ではコストをかけて丁寧にケアしていくことに注力していきますし、リストラというのはまったく考えていません」

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だが、一般職採用が多い事務スタッフ全員が高度の引受判断業務ができるとは思えない。そうなると会長の言うように他の部門に配置転換することになるが、本当にそんなことが可能なのだろうか。

確かに日本企業は石油ショック以降、事業の再編や縮小に際して、極力リストラをすることなく職務転換や配置転換によって雇用を守ってきた。その典型は1980年代のME革命である。製造機械の制御部分にマイクロエレクトロニクスを組み込んだロボットが人間の仕事を代替する事態が発生した。

しかし、当時は、例えばテレビの製造工場がME化されると、企業内教育による職務転換、配置転換よって新規事業のVTRの工場に異動させたりして雇用を守った。