「このままでは将来がない」のに動かない

政府がついに地方銀行の再編に本格的に乗り出す方針を表明した。地方銀行はこのままでは将来がないと言われ続けてきたにもかかわらず、自主的な統合や新規事業への展開ができず、「ゆでガエル」状態に陥っている。ここ数年、銀行の自主性を重んじてきた金融庁は方針を転換、積極的に再編を「指導」していくことになりそうだ。

政府は6月5日、国や地方の成長戦略を議論する「未来投資会議(議長・安倍晋三首相)」を開き、2019年の実行計画案を示した。その中で、経営環境が厳しさを増している地方銀行について、今後10年間で集中的に再編を促す方針を盛り込んだ。

2019年6月5日、未来投資会議で発言する安倍晋三首相(手前から2人目)/写真=時事通信フォト

計画案では、「(地方銀行などは)地域における基盤的サービスを提供し、破綻すれば地域に甚大な影響を与える可能性が高い『地域基盤企業』とも言える存在であり、その維持は国民的課題である」とし、国が本腰を入れて地銀支援に乗り出す姿勢を示している。

地方銀行など地域の金融機関について、「それぞれの地域において、7割から8割の企業のメインバンクとして、地域経済を支えている」とした上で、「業績が悪化すれば、貸出金が減少するなど、悪影響が預金者や借り手に及び、地域における円滑な金融仲介に支障を及ぼすおそれがある」と指摘。「早期に地域銀行の事業の改善を図るため、経営統合により生じる余力に応じて、地方におけるサービス維持への取組を行うことを前提に、シェアが高くなっても特例的に経営統合が認められるようにする」と述べ、特例法を設けるなどの措置を取るとしている。

2割超の地銀は5年以上の赤字が常態化

政府が地銀再編に乗り出す背景には、地銀の業績悪化がある。金融庁のまとめでは、2018年3月期決算段階で、全国の地銀106行のうち、54行が貸し出しなど本業のもうけが赤字となっている。このうち23行は5期以上にわたって赤字が続いているという。

また、日本銀行が4月17日に発表した「金融システムリポート」でも、10年後の2028年度に約6割の地方銀行が最終赤字になるとの試算を示した。

地方銀行が早晩立ち行かなくなることは5年以上前から明らかだった。2015年から3年間の森信親長官時代に、金融庁は地銀に対する監督姿勢を一変させた。「箸の上げ下ろしまで口を出す」と言われたそれまでの検査監督体制を改め、金融機関に自立を求めたのである。銀行などに立ち入り検査する強権を担った「検査局」を廃止してみせ、「金融機関との対話重視」の姿勢をとったのだ。地銀各行の経営は、それぞれの経営者が考えて行えと求めたわけだ。