私自身も、ソリストになる特訓などは受けずにコンセルヴァトワールを卒業していますので、当初は無難な演奏しかできず、正直パッとしない演奏家でした。一流のソリストたちと密にやりとりしながら演奏を続けていくことで、自分でも驚くほど短期間に、急成長をとげることができたのです。

たとえば、一流のソリストのフレージング(旋律の区切りのつけ方で、楽曲の表情やニュアンスが豊かになる方法)や音楽全体の方向性のつけ方などをたくさん身につけ、ぐんぐんと腕が上がっていきました。音楽観も豊かになり、やがて自他ともに認める、本物のマリンバソリストに成長していったのです。

腕が上がると、こんどはクラシックだけでなく、ジャズやコンテンポラリーなど、さまざまなジャンルからも声がかかるようになります。こうして、私のレパートリーと演奏家としての技量は一気に広がっていったのでした。

当時デュオを組んでくれた仲間たちには、今でも感謝しきりです。

新世代のマリンバ奏者への期待

当時の自分を振り返りながら少し残念に感じるのは、マリンバのソロ演奏がごく当たり前のものになった現在でも、若い世代のマリンバ奏者で「この人は素晴らしい!」と手放しで感動できる人になかなか出会えないことです。

フランソワ・デュボワ『作曲の科学 美しい音楽を生み出す「理論」と「法則」』(講談社・ブルーバックス)

楽曲がもつ真の意図を汲み取り、それを再現するための音の引き出し方を研究し尽くさなければ、中途半端なレベルの演奏にとどまってしまいます。ソリストとしても十分に通用するような、その人ならではの個性をもった音楽家を目指さないと上達は見込めません。

マリンバの楽器としての地位をピアノやバイオリンに近づけていくためには、この楽器に携わる個々の演奏者それぞれが、楽曲に対する独自の解釈を確立しうるくらいのレベルにいたるまで自らの演奏を突き詰めてもらいたいと考えています。

ピアノやバイオリンのソリストたちは連綿と、そして今もなお、その努力を継続しているのですから。そして、そのような技術、演奏観を身につけるには、とにかく繰り返し繰り返し、しつこく曲を弾きこなしていくしかありません。私を驚かせるようなマリンバ奏者が登場することを、楽しみに待ちたいと思います。

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