写真=iStock.com/OlafSpeier
マリンバの木製の鍵盤と、金属製の共鳴管。倍音を含めて調律が施され、独特の豊かな音が出る。(※写真はイメージです)

当時はまだ、自分の演奏技術に納得できていなかった、道半ばのころです。不安の拭えなかった私は、世界で初めて、マリンバと他の楽器によるデュオで演奏するというアイデアを思いつきました。誰もが知っているソロ楽器と組むことで、注目をしてもらいやすくなるのと同時に、舞台度胸のあるソリストと合奏することでいやでも自分の演奏技術が引き上げられる。お互いの音を支えあうことで相乗効果を生み出せば、なんとか乗り越えられるかもしれない――まあ、苦肉の策ですね。

そこで選んだのが、バイオリンでした。じつは、そのころ付き合っていたガールフレンドがバイオリニストで、彼女とできるだけ長い時間を一緒に過ごせるようにという魂胆もあったのです。長く付き合いが続くといいなという願望もあったのですが、残念ながらコンサートの後しばらくしてフラれてしまいました……。

それはともかく、これを契機に、その後も一流のソリストたちとデュオを組めるようになったのですから、なんともふしぎな展開です。

肝腎の初舞台は大成功を収めることができ、舞台の袖で見ていた著名な作曲家から大絶賛されるというおまけ付きでした。「これは新鮮だ! ぜひ、マリンバとバイオリンのための曲を書かせてくれ!」といって書いてくれたのが、「Barbarie」という曲です。後日、この作品を演奏したテープをコンクールに応募したところ、見事、フランス財団の賞を獲得することができました。人生はほんとうに、ふしぎな伏線に満ちています。

ピアノやバイオリンとの決定的な違い

ここで一つ、一般の人にはあまり知られていない“演奏家の裏事情”について、ご紹介したいと思います。ピアノやバイオリン、ギターなどのソロ楽器がなぜ、代表的な楽器としてその地位を確立し、これほどまでに有名になったのか、その理由をご存じですか?

まず第一に、有名な作曲家による楽曲がたくさん提供されているから、という要因があります。たとえば、ショパンやモーツァルト、ドビュッシーやベートーヴェンのような大御所作曲家たち(存命当時はそこまで有名でなくても、没後に名声を得た例も含みます)による、「バイオリンのための~」「ピアノのための~」といった曲が数多く書かれたことで、それらを弾きこなせる奏者も続々と現れる、という好循環が起こります。