驚いたことに、さらにこれをマネタイズしているのがトランプ大統領である。トランプ選対委員会のオフィシャルウェブサイトでは、有名な赤いMAGAキャップ(「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」と書かれた帽子)などとともにプラスチックのストローが売られている。「トランプ」というロゴ入りの赤いストローに込められたメッセージはこうだ。
「民主党は環境に悪いからとプラスチックのストローを禁止して、紙のストローを押し付けようとしている。紙ではなんとも飲みにくい。ウチのストローはリサイクル可能なプラスチックだし太くて飲みやすいからこちらの方がベターだ」
10本入りで15ドル、これまでに約5万5000セット(80万ドル相当)を売り上げて選挙資金の一部になっているという。
「肉を食べるか否か」論争は共和党の思うツボ
こうした両党のせめぎ合いは、アマゾン火災が大きく報道され始めた夏の終わりから顕著になっていたが、そこで折しももう一つの巨大な自然災害が発生した。アメリカ人の人気リゾートでもあるバハマを襲った史上最強のハリケーン・ドリアンが、壊滅的な被害をもたらしたのである。
この辺りから、アメリカ人の環境への関心がこれまでで最高潮に達したのは間違いない。
その直後、CNN主催で民主党の大統領候補者を集めた視聴者参加番組「環境タウンホール」が開催された。
各候補者はそれぞれ独自の環境対策を打ち出し有権者にアピールしたが、ここでも肉やストロー、そして省エネ電球などが話題に上がったのだ。
最有力候補の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員はこんな質問を受けた。「トランプ政権は省エネ電球の基準を引き下げると発表しましたが、国民がどんな電球を使うかを政府が決めるべきだと思いますか?」
それに対しウォーレン候補はこう答えた。
「もちろん環境のためにできることはたくさんあリ、人によっては省エネ電球だったり、ストローやチーズバーガーをやめることだったりもする。でも、私たちがそれに関して論争することは、もっと環境を汚している化石燃料産業の思うツボ。大気中に放出される温室効果ガスの7割はこうした産業から排出されていることを考えると、私たちがターゲットにしなければならないのはこうした産業なのだから」
一方、その1週間後に行われた3回目の民主党大統領候補討論会でもこんな会話があった。自身がヴィーガンとして知られるコーリー・ブッカー上院議員は、「環境を守るためにアメリカ人は皆ヴィーガンになるべきだと思うか?」と聞かれ「ノー」と答えている。
いずれも共和党の思惑通り、環境論争が肉やストローに終始してしまうことを警戒しての反応だろう。