2017年1月の就任以来、アメリカのみならず全世界を引っ掻き回しているのが、アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏。その態度振る舞いにより全世界のインテリからは猛批判を浴びるが、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長を会談の場に引っ張り出すなどの成果もあり、国内の支持率は上昇気味だ。大阪府知事や大阪市長として数々の改革にチャレンジし成功を収めてきた橋下徹氏は、「膠着した現状を打破する」という一点で、トランプ大統領のやり方には学ぶべきことが多いという。そのポイントはどこか。3回にわたり紹介する。第3回のテーマは「交渉術」だ。

※本稿は橋下徹『トランプに学ぶ現状打破の鉄則』(プレジデント社)の「CASE7」から一部を抜粋したものです。

写真=AFP/時事通信フォト
首脳会談を前に握手するトランプ米大統領と習近平中国国家主席=大阪府大阪市、2019年6月29日撮影

僕だってトランプ氏が交渉相手だったら面倒だ

トランプのことを嫌いな人は、世界中にたくさんいると思う。でも、好き嫌いを脇におけば、トランプの政治的態度振る舞いは、実践的な交渉をする者にとって役立つことが非常に多い。観念の世界に生きる者ではなく、現実の世界に生きる者には大いに役立つと思う。

たとえばビジネスを進める上では、相手の好き嫌いはある意味どうでもいいことだ。成果がすべて。その視点から見ると、トランプの交渉術には現状を打破し、成果を出すノウハウが詰まっている。ゆえに、トランプの好き嫌いは別として、そのノウハウはしっかりと学ぶべきだろう。

激しい利害得失がうごめく現実の交渉の場では、トランプ的態度振る舞いが効果を発揮することが多い。

僕も政治家になる前の弁護士業務において、激しい交渉を数え切れないほどやってきたけど、正直「トランプが交渉相手だったら面倒だな」と感じるよ。交渉人にとっては、相手から「面倒だな」と思われるのが最高の栄誉で、逆に「楽だな」と思われた時点で失格なんだよね。

そういう意味でトランプは、ビジネスの世界では交渉人としてピカイチ。それも超Aクラスだと思う。まぁ、そんなことを僕が言わなくても、普通のビジネスマンなら、誰でもそう感じるだろうけどね。反対に、観念の世界で生きる学者たちには、トランプの能力のすごさはまったくわからないだろう。