スピーチをする際、丁寧にしようとしてまわりくどいあいさつをする人がいる。事業戦略コンサルタントのリップシャッツ信元夏代氏は「このようなあいさつは聞き手をうんざりさせる。スピーチの良しあしは、最初の7秒に何を言うかで決まってしまう」と指摘する――。

※本稿は、リップシャッツ信元夏代『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

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「こんな名誉をいただき」と恐縮する時間はない

さてストーリーの力については実感されたかと思いますが、たとえ同じストーリーであっても人前で話すときには、オープニングとクロージング次第で、印象が激変します。

第一印象という言葉がありますよね。最初にパッと目に入る表情、身なりなどが大きく印象を左右するわけですが、スピーチでは、最初の7秒になにをいうかで決まります。

マイナスに作用するのが、まわりくどい挨拶をすること。スピーチに立つ時に、つい丁寧にしようと思って「このような名誉をいただきまして、まことに恐縮です」といった長たらしい挨拶をする人もいますが、これは聞き手をうんざりさせます。英語では、Unpleasant pleasantry「非礼なる礼儀」といい、スピーチで避けるべきことです。

そして話が始まったところで、聞いている側は、30秒で話がおもしろいか、おもしろくないかを判断するとされています。

たった30秒です。ほとんどの話は、プレゼンだろうが、セールスだろうが、発表会だろうが、30秒内という短い時間で判断されてしまう。30秒内に相手を引きこむことができることが課題となるのです。

これを7秒―30秒ルールといいます。第一印象、第ニ印象ということもできます。最初の7秒が第一印象の勝負ポイントですが、第一印象がよくなくても、第ニ印象がよければ、聞き手は話に引きこまれます。

反対にいえば印象を強めるにはチャンスは2回しかない、ということです。

たった7秒の間に相手を掴まなくてはならないオープニングでは、いかに、「この人の話をもっと聞きたい!」「次を聞きたい!」と思わせられるかに集中したいものです。その基本の手法を4つご紹介しましょう。

聞き手の注意を向ける“つかみ”4方法

1.ストーリー

最もインパクトを出しやすいオープニングは、この「いきなりストーリーで始める」です。私がセミナーを行う際にもよく使う手法です。もちろんセミナー講師としての信頼感が得られるように自己紹介も入れなければならないのですが、たとえばふつうに、

「おはようございます。信元夏代です。まず私のバックグラウンドについて説明させてください」

と話したとしても、受講者側は「上司に出ろといわれた研修だから来たけど」という気持ちから抜けきれないことでしょう。その代わりに、私は次のような感じでオープンします。

「2014年3月のことでした。とある居酒屋で、私は御社の阿部社長と隣り合わせで座っていました。

ちょうど大学の年次総会が盛況に終わったあとで、気のおけないお喋りを交わしていたのですが、阿部さんが『そういえば何年もあなたを知っているけれど、仕事はなにをしているのかね? ダンスをやっているのは知っているけれど』と尋ねていらしたのです」