2017年1月の就任以来、アメリカのみならず全世界を引っ掻き回しているのが、アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏。その態度振る舞いにより全世界のインテリからは猛批判を浴びるが、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長を会談の場に引っ張り出すなどの成果もあり、国内の支持率は上昇気味だ。大阪府知事や大阪市長として数々の改革にチャレンジし成功を収めてきた橋下徹氏は、「膠着した現状を打破する」という一点で、トランプ大統領のやり方には学ぶべきことが多いという。そのポイントはどこか。3回にわたり紹介する。第1回のテーマは「悪役キャラ」だ。

※本稿は橋下徹『トランプに学ぶ現状打破の鉄則』(プレジデント社)の「CASE1」から一部を抜粋したものです。

写真=EPA/時事通信フォト
米国ワシントンDCのホワイトハウスで記者会見するドナルド大統領=2019年9月11日撮影

成功している事業家に「バカ」はいない

トランプについては、学者やコメンテーターなどいろいろな「自称インテリ」が、大統領就任以来ずっと「バカだ」「あいつはむちゃくちゃだ」と批判している。でも、僕はトランプを評価している。トランプのおっちゃんの言動には「現状打破の鉄則」が詰まっているんだ。

僕自身をトランプと並べるつもりは毛頭ないけど、僕が政治家時代にやってきたこととトランプが今やっていることには共通点も多い。僕やトランプが「破壊者」として求められた時代の状況も似ている。だから、一見むちゃくちゃな彼の行動が、膠着した現状を打破するためにどんな考えから導き出されているか、僕は自称インテリよりも理解していると自負している。

まず、トランプはバカじゃない。僕はアメリカに行って、実際にトランプタワーも見てきた。あのド派手なビルの趣味がいいとは思わないけど、浮き沈みはあっても不動産業であれだけ成功するのはすごい。誰にでもできることじゃないよ。そして、成功している事業家に「バカ」はいない。

彼の自伝を読む限り、ものすごいハードワーカーで勉強家でもあるようだ。そして、後述するけど、トランプの発言、態度振る舞いは、実践的交渉術として非常に戦略的でもある。