温暖化対策はアメリカを二分する問題に

15歳の男子は「この抗議活動は自分たち生徒が学校を休んでやっているけれど、実際に世の中を変えることができるのは大人だけだ」と訴えていた。

撮影=Kazushi Udagawa
ストには投票権のない少年・少女も多く参加した

彼らはおしなべて「環境に関する大人の動きが鈍い」と感じている。そしてその背景には、環境をめぐる驚くべき政治の二極化が存在していた。

アメリカ人の環境への意識はにわかに高まっていて、気候変動が人類の未来に深刻な影響を与えると考える人は、6年前の4割から6割近くに増えている(ピュー研究所調べ)。ただし、意識が高まっているのは、野党の民主党支持者だけなのだ。

研究所によると、民主党と民主党寄りのインディペンデント(支持政党なし)の有権者の84%が、温暖化を深刻に捉えているのに対し、共和党支持者は27%にとどまり、6年前からわずかしか増えていないという。つまりアメリカ人の環境意識は、リベラル寄りの民主と保守寄りの共和ではっきりと二極化してしまっていることになる。

その結果、本来ならば地球と人類全体の問題であるべき環境問題は、政治的な対立の火種になってしまっているのだ。

スター議員が打ち出した「グリーン・ニューディール」

ご存知のように、トランプ政権と共和党は人間の活動による気候変動・地球温暖化を否定し、経済優先で環境規制を次々と緩和している。それに対し、民主党がもっと厳しい環境規制を掲げて大統領選を戦おうとしているのは自然な流れでもある。

今年2月、民主党が提案した「グリーン・ニューディール」という決議案は、環境対策だけでなく、気候変動の影響を最も受ける低所得者の救済も含めた非常にプログレッシブなもので、提案したのが今年ニューヨークから最年少で下院議員に就任し、瞬く間に民主党のスーパースターになった“AOC”ことアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(30)だったことも大きな注目を集めた。

「グリーン・ニューディール」というタイトルも、1930年代の世界大恐慌後のルーズベルト大統領による有名なニューディール政策を彷彿ほうふつとさせ、スケールの大きさとシリアスさを感じさせた。法案は上院で否決はされたが、「環境の民主党」というイメージを強く印象付けることには成功したと言っていい。

ところが驚くのは、それに対しトランプ大統領と共和党が送り始めたメッセージである。

「民主党に投票すると肉が食べられなくなる」

「民主党が打ち出す厳しい環境規制が実行されると、今まで乗っていた車にも飛行機にも乗れなくなる、ハンバーガーも食べられなくなり食生活も変えなければならない。これまでの生活を守るためには共和党に投票すべきだ」

 
民主党が厳しい環境規制で変えようとしているアメリカのライフスタイルと、それを守る共和党とトランプ、という図式だ。肉をやめてでも環境を守りたいという若者たちの思いを、政治的な意図にすり替えたのだ。