「肉消費を抑えよう」にニューヨーク市も賛成

米農務省によれば、ブラジルの肉の生産量は世界の20%を占めているという。アマゾン火災の原因とされる熱帯雨林の農地化は、世界の肉の需要に応えるための畜産を振興するのが目的。だったら肉の消費を減らすことで、少しでも森林破壊を防ごうという発想だ。

撮影=Kazushi Udagawa
メッセージの中には、ヴィーガンになることを呼びかけるものや、畜産が温室効果ガス排出の原因になっていることを訴える内容もあった

そもそも若いミレニアル&Z世代のアメリカ人の間では、アマゾンをはじめとする森林破壊とその原因となる畜産の問題は、この火災が大きなニュースになるずっと前から問題視されていた。こうした情報を拡散したのはストリーミングで見られるドキュメンタリー映画や、YouTubeコンテンツとSNSである。

畜産から発生する温室効果ガスは世界全体の15~18%に上り、地球温暖化に多大な影響を与えていること。その畜産を進行するためにアマゾンの熱帯雨林が破壊されていることも広く知られるようになっていた。

その結果、ここ1~2年で環境保全のためにヴィーガンになったり、または肉の消費を控えようという若者が増えている。深刻な肥満問題を抱えるアメリカでは、そもそも自分たちが肉を食べすぎているのではという疑問が浸透してきていることも影響している。

ニューヨーク市ではこの秋から1週間の給食のうち、月曜日だけお肉をやめ、ベジタリアンの食事を提供するという「ミートレス・マンデー」を始めた。その理由も「健康と環境のため」とうたっている。

健康、環境、それに動物愛護も加わってひとつのムーブメントを作っているのだ。

主食を断つことで政権に抗議

環境問題解決のために肉を控えるなんて、そんな焼け石に水のような……と思うかもしれない。しかしご存じの通り、トランプ政権は地球温暖化の原因を人間の活動によるものだとは認めていない。だからパリ協定から離脱し、石炭産業を奨励し、多くの環境規制を緩めている。

そんな中で、肉を食べないという選択は実は小さなものではない。なぜならアメリカ人にとって、肉は主食だからだ。日本人にとって米が主食であるように、それを食べないというのは心理的にも肉体的にも相当な変化、時には負担を伴うもので、それだけ彼らが危機感を感じているということにもなる。それは何もしない政府に対するせめてもの抵抗であり、周知する手段という考え方もできる。

同時に、肉を食べないという発想を押し付けてほしくないという抵抗や反感が強いのも事実だ。そこで、その抵抗を少しでも小さくしようという発想から、新たなビジネスも生まれてきている。