プロテインなどで作られた代替肉が、世界各国で広がりを見せている。欧米ではマクドナルドやケンタッキーといった大手ファストフードも参入済みだ。日本でも流行する可能性はあるのか。代替肉市場の最前線に迫る——。(第4回、全4回)
知らずに食べたら“本物”と思うくらいにおいしい
2019年5月。とある企業の米ナスダック株式上場が大きな話題になった。ビヨンド・ミート、いわゆる代替肉のメーカーである。IPO価格に比べ192%という記録的上昇によって、時価総額は38億ドルに膨れ上がり(ブルームバーグ、5月3日)、食の未来を変えるゲームチェンジャーだと大きな注目を集めた。
実は、ヴィーガンやベジタリアンが食べる代替肉自体は特に新しいものではない。これまでもヴィーガン向けの肉を使わないグルテン・ミート、べジー・バーガーなどは専門店で販売されていた。
しかし、2009年に創立したビヨンド・ミート社がにわかに注目されたのには理由がある。2016年に発売され、豆から抽出されたプロテインを原料にした「ビヨンド・バーガー」のクオリティーがとても高いのだ。豆や雑穀を固めて作っただけのこれまでのベジー・バーガーと違い、分子レベルで本物の肉に似せて作られているために、食感も見た目も味もお肉とほとんど変わらない。
筆者もビヨンド・バーガーを食べてみたが、あえて言うなら「ちょっとさっぱりしたハンバーガー」という感じがした。パティを焼くと赤い肉汁(ビーツの汁)まで出るという凝りようで、黙って食べさせられたら代替肉とは分からないだろう。
栄養面でも、プロテインの量は同じサイズの牛肉ハンバーガー・パティのタンパク質と変わらないが、脂肪分もカロリーも少ないのがポイントだ。