昆布や海苔のおやつにブームの兆し?

筆者が取材したベジタリアンフード・フェスティバルでは、ヴィーガン・バーガーやアイスクリームはもちろんあったが、今年の注目アイテムはというと「ケルプ(昆布)です。アクアという会社のケルプ・ジャーキーはとてもおいしいですよ」(サラさん)。

撮影=シェリーめぐみ
アクア社の「ケルプ・ジャーキー」

実は、アメリカではヴィーガンに限らず、海藻が新たなスーパーフードとして静かな注目を集めているのだ。

特に動物性タンパクを取らないヴィーガンにとって、オメガ3脂肪酸、ヨウ素、ビタミンB12カルシウム、マグネシウムなどが不足しがちになる。それを補えるのが海藻というわけだ。

もともとアメリカ人は海藻を食べる習慣がない。かつては黒くて不気味と嫌われた海苔は、バーベキュー味、わさび味などの味付け海苔の状態でスナックとして普通に売られるようになったが、まだまだこれからといった感じだ。フェスティバルでも、アクアのケルプ・ジャーキーのほか、クラッカーなどに塗って食べる藻類のスピルリナをペースト状にした商品があった。

大型スーパーなどには昆布を原料にしたケルプ・ヌードルなども見かけるようになっているし、海藻に注目するシェフも増えてきているようだ。味や食感がもっと進化して大きな投資家がつけば、もっとマスに注目されるようになるかもしれない。

撮影=シェリーめぐみ
ミレニアル世代に人気のスーパー「Trader Joe's」のノリ・スナック

もっとも、筆者がケルプ・ジャーキーを食べた正直な感想としては、もしかすると海藻に長年慣れ親しんでいる日本人の方がずっとおいしく作れるのではないかという気はしたが……。

温暖化が止まらない限り、トレンドは続く

深刻な肥満や生活習慣病などを抱えるアメリカで、サバイバルのために健康に気を遣うようになってきたミレニアル世代やZ世代に対し、セレブやネットのインフルエンサーのメッセージが共鳴。さらにはドキュメンタリー映画などが描く肉食の健康リスク、動物虐待、さらには畜産の地球環境破壊への懸念が強まることでヴィーガン文化はアメリカで大ブレークした。

そこに地球環境や食糧問題から生まれた代替肉が加わることで、ヴィーガン、ベジタリアンを超えて、アメリカの若者の間で「植物性の食生活」が今まさにブームになっている。

だが、果たしてこれは一過性のトレンドなのだろうか?

ベジタリアン・フード・フェスティバルのサラさんは「このトレンドはこのまま続いていくと思います。なぜなら畜産を続ける限り、地球の温暖化が元に戻ることはないからです」。