今やスーパーの肉売り場にも並ぶように

さらに話題なのは、ビヨンド・ミート社のバックに有力なベンチャーキャピタルが付いており、潤沢な資金があることだ。このベンチャーキャピタルはシリコンバレーのITスタートアップ企業を中心に投資を行っており、肉を食べる喜びを失わず、健康にも環境にもいい製品を作ろうというコンセプトを前面に打ち出している。

ビヨンド・ミート社は今や食品ブランドのスーパースターにのし上がり、ホールフーズなどのオーガニックスーパーのみならず、普通の大手スーパーの肉売り場にも置かれるようになった。

他方、ライバルのインポッシブル・フーズ社が出している「インポッシブル・バーガー」も好調だ。こちらはスタンフォード大学の生化学の教授による移植用の筋肉細胞を、植物由来で作ろうとする研究から始まったという。

撮影=シェリーめぐみ
バーガーショップ「ネクスト・レベル・バーガー」で販売されているビヨンド・バーガーを使った商品

これまでは限られた店でしか手に入らなかったヴィーガン・ミートを、ハンバーガーというアメリカ人が最も好きな料理の形にして、しかも限りなく肉に近いおいしさで手軽に食べられるようになったことは、まさにエキサイティングな革命以外の何物でもない。

ヴィーガン歴8年の女性は「私も野菜や豆腐、雑穀類などと一緒に、ビヨンド・バーガーやインポッシブル・バーガーなどの代替肉はよく食べています。特にヴィーガンやベジタリアンになったばかりの人にとっても、食べやすくていいと思いますね」。

しかし、実はこうした代替肉は、ヴィーガンやベジタリアンをもはやメインターゲットにしていないのだ。

代替肉が本当に狙っている顧客層は

驚いたことに、ビヨンド・ミート社によれば、商品を購入する人の9割はヴィーガンでもベジタリアンでもないという。これまでにない代替肉のリアルさに驚いた肉食のアメリカ人が文字通り飛びついているのだ。

こうした代替肉は、プラント・ベースド・ミート(plant-based meat、植物性の原料を使った肉)と呼ばれている。

調査機関グッド・フードインスティチュートの調べによれば、最大手のビヨンド・ミート社の売り上げは2017年~18年の1年間で前年から70%増。代替肉全体の売り上げも23%増えた。普通の食肉の伸びが2%に止まっていることに比べると、その成長の大きさが分かるだろう。

こうした代替肉への投資も急激に増加している。ビル・ゲイツ、俳優のレオナルド・ディカプリオといった有名投資家をはじめ、フェイスブックやウーバーなどに投資してきたベンチャーキャピタルも関わっている。食肉大手のタイソン・フーズや、グローバルブランドのネスレなども投資に乗り出している。