あと20年で家畜は食肉市場の半数以下に?

世界的な経営コンサルティング会社A.T.カーニーは、2040年までに世界の食肉市場の6割が、代替肉とラボミートになると予測している。

その根拠は、2018年時点で76億人だった世界の人口は、2050年までに100億人に達し、併せて食肉需要も劇的に増加するからだ。それに対し、多くの土地と水を必要とする畜産は、「NYの若者「肉の代わりに大豆」という意識の高さ」(8月28日)で述べたように非常に効率が悪く、温室効果ガスの排出、森林破壊などでとても持続可能な食糧の生産方法ではない。

また、地球温暖化や人口増加のために耕地が縮小していく将来、熱帯雨林のような貴重な自然を破壊するという犠牲を伴い、また肥沃ひよくな土地を維持するために大量の水を消費する畜産はもう正当化できなくなる。

さらに今後、食肉の生産量を増やすための成長ホルモンや、抗生物質への規制が厳しくなると、畜産自体が世界の人口増加に伴う消費の拡大、特にこれまで肉の消費が比較的少なかったアジア地域などの需要を支えきれなくなると考えられている。

一方で、これからのマーケットの主役であるミレニアル世代やZ世代に、畜産の動物虐待や環境破壊といったネガティブなイメージが定着する中、企業も投資家もますます代替肉とラボミートに傾倒していくことは間違いないだろうと予測されている。

“乳”ではないミルクも登場

肉以外の代替プロテインも注目されている。中でも代替肉に先駆けて普及したのは「ノンデイリー」と呼ばれる、牛乳や羊乳ではないミルクの代替製品だ。

豆乳は一足先にかなり普及していたが、「豆乳を飲みすぎると女性ホルモンが増えて男性が女性化する」という情報(現在は誤報とされている)がネット上を駆けめぐったために豆乳離れが進み、代わりにアーモンドミルクが急速に普及した。

それを引き金にさまざまなノンデイリー製品、カシューミルク、ココナッツミルク、オートミルクなどが注目を浴び、これらを使ったヨーグルト、アイスクリーム、チーズが急速に広まり、ヴィーガントレンドを後押しする形になった。

市場規模も、乳製品を含む全体の15%を占めるまでになっている。つまりすでにヴィーガン、ベジタリアンのカテゴリーを超えてしまっていると言っていいだろう。牛乳業界が、こうしたノンデイリー商品を「ミルクと呼ぶべきではない」とクレームを付けているのも、そのパワーのすごさを物語っている。

こうしたノンデイリー製品に対する投資も引き続き活況で、市場はまだまだ拡大しそうだが、さらに新たに登場してきたのがラボミルクだ。微生物を使って動物性のミルク・プロテインを作り出す試みが進んでおり、こちらも投資家達の熱い注目を集めている。