不動産業に変わりつつあるJR九州の存在意義

次にJR九州の財務内容を見てみましょう。

JR九州も、JR東海ほどではありませんが、2019年3月期はまずまずの業績を残しています。売上高は前期比6.5%アップの4404億円、営業利益は639億円、売上高営業利益率は14.5%、ROEは12.4%です。

先ほど、JR東海の財務内容を見た後だけに、少し物足りない気がするかもしれませんが、JR東海が良すぎるのでそう感じるだけで、JR九州も悪くはありません。ただ、セグメント情報は注意して見なければなりません。

次の表をみると、JR九州は「実質的には」運輸サービス事業よりも駅ビル・不動産事業で稼ぐ構造になっているのです。

別に個別の会社がどのような事業で稼いでも問題はないのではないかと思われるかもしれませんが、JR九州の場合には少し疑問符が付きます。

JR九州「投入された3877億円の公的資金」の使途

どういうことかというと、株式上場前のJR九州には「経営安定基金」として、3877億円の公的資金が投入されていました。国鉄分割民営化の際に、自前ではローカル線の維持などが難しい、いわゆる「三島会社」であるJR北海道、JR四国、JR九州に政府から資金が投入されたのです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/holgs)

少し会計的には専門的になりますが、これらの基金は、貸借対照表の「純資産」の部に計上されていました。つまり、株式と同じ扱いです。JR九州は、上場に際し、どういう経緯があったのかは知りませんが、その基金を自社の「資金」としてもらってしまったのです。

本来は国民のお金(税金)ですから、上場する際にも政府からの借り入れなどに変更すべきだったと考えられますが、それが結果的にもらった形になった。上場に際して、それまで出資してくれていた株主からの出資金をもらってしまうというのと同じで、少しでも会計のわかっている人から見ると、大きな疑問符が付く財務内容の変更を行ったわけです。

そして、そこで得た利益で劣化していた鉄道資産などの減損を行い、簿価を下げるとともに、基金の解消で浮いた資金で、九州新幹線の線路使用料などのコスト20年分を前払いしたのです。

九州新幹線は上下分離方式と言われる運営方式となっており、JR九州が施設を所有する「鉄道・運輸機構」に毎年100億円強の賃料を支払い、線路を借りて営業しています。先ほどのセグメント情報では運輸サービス事業はプラスになっていました。これは新幹線の路線などの賃料の先払いをしたおかげで、利益の底上げができているからです。先ほど「実質的には」と書いたのはそういう意味からです。

問題は、もともとはローカル線維持のために国民から与えられた基金を上場時にもらっておきながら、ローカル線はむしろ縮小方向で、九州地域の人たちの生活には貢献できていません。さらに上場を機に不動産開発に邁進まいしんし、その利益はローカル線維持ではなく、配当という形で投資家に渡っています。

これでは公共交通機関としての存在意義が疑われると思います。今後、赤字が確実視される九州新幹線の長崎への延伸も含めて、JR九州は多くの課題を抱えている私は思います。

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