「ぬれ甘なつと」を超える商品が生まれない

こうしたコンビニのスイーツが競合となったことで、近年売上は伸びず、これに東日本大震災による特別損失の計上が輪をかけるかたちで資金繰りが悪化した。

もう1つ大きな打撃だったのは、東京駅構内の2店舗の閉鎖だ。そのうち一店舗は2012年、家主が代わってテナントの路線変更がなされたため、もう一店舗は2014年、東京駅構内の耐震工事のために、相次いで撤退を余儀なくされた。その間の2013年6月期は債務超過に転落。支払いに関する信用不安が流れ始めたのもこの頃だ。

一方、総合スーパーやコンビニなどの中元・歳暮需要は増え、OEM受注(自社外のブランドからの発注で製品を製造すること)など法人営業では成果の兆しがあった。この間、商品ラインアップは多様化するが、売上構成比がトップなのは依然として「ぬれ甘なつと」であり、これを超える人気商品を生み出すことはできなかった。

「値段が高い」の声に耳を傾けてきたか

2017年6月期の売上高は約19億272万円と低迷。80だった店舗数は46まで減り、再建を目指して経営のスリム化を懸命に進めたものの、資金繰りは目に見えて厳しくなっていった。その中で経営基盤の強化や事業承継も視野に入れ、スポンサー企業や業務・資本提携企業も模索し始める。

帝国データバンク 情報部『倒産の前兆』(SB新書)

2017年2月末からは、消費税や地方消費税が遅延。加えて、一部管理職の給与遅配も生じ、取引先への支払いにも支障を来すようになる。懇意の取引先等に支払い延期を要請するなどしていた。1~6月はギフト需要が少なく、売上の確保が困難な時期である。

そんな最中の2018年3月以降は、すべての金融機関への元利金の返済・支払いを停止し、4月末までで公租公課の滞納は約1億5000万円に達していた。

何とか事態を打開すべく、金融機関に運転資金の借入れを打診する。5月末の現預金が4000万円となる見込みの中、同日に約1億円の支払いを控えている状況だったが、5月に借入れの話は白紙化、これをもって事実上の破綻となった。

かねてより、「ぬれ甘なつと」や「花園万頭」には「値段が高い」という声も多くあった。高級路線を貫いたことで、若者を取り込めないだけでなく、既存顧客の中高年さえ離れていった可能性もある。

老舗ブランドには、決まって従来の製品を愛してやまない消費者がいるものだが、一方では、時代の変化に合わせて適宜、従来型から変えていくことも必要なのだ。

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